91話・授業と複製

さてさて、他の大陸に行くのはいつになるやら。

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 朝になって、やっと仕事が終わり、次にするのは先生にこの世界の事を教える授業だ、先生にはクラスメイト達に教えてもらおうと思っているため、知ってもらう必要のあることが沢山ある。


「先生、ワークはどのくらいできましたか?」


「正誤はともかく、一通りしてきましたが……」


 そう言って先生が提出したワークを確認する。


「全問正解です、これ正解して無ければ言語の授業をする予定だったので、少し短縮できてよかったです。

 では、今日の講義は、お金です」


「それは良いのですが……後ろの二人は?」


 後ろでは唯と正義君がノートと教科書を準備している。


「生徒です、気にしなくていいですよ」


「生徒って言っても私の生徒では……」


「今は私の生徒でもありますよ、では始めますね……」


 先生が何か言おうとしていたが、それを遮って、恐らく最初で最後の授業を始める、硬貨のランクから始まり、向こうとの物価の違い、その他色々なことをこの世界の文字でノートに取らせる、普通の授業と共に、この世界の文字をより覚えてもらうためだ、授業中なのでもちろん挙手による質問もある、そんな中、先生が質問をする。


「この世界に銀行はないんですね」


「そうですね、銀行の機能は大きく分けて二つ、まずお金を預かって銀行が持つ資産を増やします、それをお金が借りたい人に利子をつけて貸します、その為に必要な、保管の安全性と、回収の確実性を確保するのが難しすぎるんですよ、今はうちの商会がどうにか頑張ってできないか試行錯誤していますが、どうしても確実性が難しいんですよ」


「そこはどうにか絢さんの力でできるのでは?」


「私の力を万能か何かと勘違いしてませんか?

 私の力はあくまでも私のよく知っているもの限定です、それがどういう物なのか想像すらできない物を作り出すことはできません」


「そういう魔法を作ればいいのでは?」


「それを職員全員に教えるのが難しい上に、力量差関係なく効果を発揮する魔法なんて作りようがないんですよ、そういう念書でも作成できればいいのかもしれませんが、それを数作成するだけで、私の一日が終わります」


「では複製の能力は?

 それなら原本を一つ作れば、無工程で無限に作り続けられるのでは?」


 複製……、考えたこともなかった、確かに作り出すわけじゃないから大量に考えることもない、確かにいい案だ。


「……話がそれましたね、授業を再開しましょう」


「え……回答は?」


「先生、今あなたは生徒です、挙手以外での私語は自重してください、では……」


△▼△▼△▼△▼


 しかし複製ですか、原本はすでにできているのですが……、複製の能力を作り、原本を右手に持つ、一度だけ試してみると、原本そのままが私の左手にも出現した、今度は違う設定で試してみる、右手の原本を、机の上に束で複製するように設定すると、机の上に100枚ほどの紙の束が出現し、それと同時にごっそり魔力を消費する、内容を確認してもそのどれも原本と全く同じものだった、実験が上手くいったことで次の段階に進むため、バルドルフを呼びだす。


「バルドルフ、今まで設計段階で停止していた銀行を始めましょう」


 そうしてプリンセス商会の新事業開始が宣言された。

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新事業の開始じゃー!!

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