51話・欲は無くても心はある

オークションの情景を描くのは初めてだったのでやりにくかった

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 商行王国にホテルを建てた後、私は商業王国の王都の観光をしていた……、観光という名のホテルの視察をしていた。

 普段なら直接の視察など一切しないのだが、今日視察に来ているのには理由がある、商業王国の一部の店舗で、王都で開催されるオークションに出席しないかと案内の手紙が来たのだ、商業だけでなく、冒険者としても何度も活動したことで、今私の総資産は通貨のみで大聖金貨数十枚の域にまで達している、私自身も、一体幾つのSランク依頼をこなしたのかは分からない、クラウストさんの話では冒険者ギルドの本部ではSより上のランクを作ろうとしているらしい。

 まあ、オークションでは実用的なものでもあれば購入しようと思っているだけだが、今思えばめぼしいものがあっても自分で創ればいいのだから来る意味はなかったかもしれない、しかし、もしかしたら古代の歴史書などもあるかもしれないので、そんなことを思ったのはなかったことにした。


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 そのまま、全ての店舗の視察を終わらせ、夜になった。

 バルドルフを連れて、手紙に書かれていた屋敷に行く、中々に広い屋敷で、どうやらこの地下にオークション会場がある様だ個人が特定されないよに私はキツネのお面を、バルドルフは目のあたりだけの仮面をつけ、門番に手紙を見せる、手紙を見せると門番は簡単に通してくれた、私の身長は明らかに子供なのだが通してもいいのだろうか、と、この門番を少し心配するのだが、その心配はあとでなくなった。

 屋敷に入ると、玄関にメイドが一人立っており、私達が入るとすぐに無言で私達を案内する、此処は、おそらく貴族か、大商人の屋敷なのだろう、空間的におかしな場所がいくつもある、私達を案内しているメイドも、袖やスカートの動きがおかしい、恐らく暗器を持っているのだろう、此処まで厳重だとめんどくさい……。


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 私達はVIP席というものに連れていかれた、此処で金を出さなければ、この席から外されるのだろうが、私は別にそんなことはどうでもいいので、欲しい物が無ければ一切金を出さないが……、ところで個々の単位は金貨だということをメイドが言っていた、この世界ではどれだけ多くても国家予算の限界は大聖金貨80枚ほどだそうだ、かなり上の数字まで出てきそうだ。

 そのまま暫く待っているとオークションが始まった、始めの内は絵画だの、宝石だの、要らない物が出てくる、その後歴史書や、魔法書などが出てきたので、全て競り落とした……、そして書物の競りが終わった頃会場の空気が変わった、下卑た空気が広がる、いやな感じだ。


 オークショナーが準備をすると言って裏に回り、暫くすると布をかけた四角い何かを持ってきた、どうやら奴隷のようだ、犯罪奴隷から始まり、次々と金を落としてゆく。

 正直言って私はこの空気が嫌いだ、人を勝手に売り買いするとき特有のこの空気、しかし、犯罪奴隷までならなんとか耐えられた、彼らはそれだけのことをしたのだ、十分な報いともいえるかもしれない。

 犯罪奴隷など4、5人だけ、オークショナーは奴隷に落ちた原因を話していく、犯罪奴隷は犯した罪を、もちろんそんなものを買う気は毛頭ないので聞いていない、問題はその他だ、「種族が人間ではないから」、「口減らしのため」そんな説明が聞こえる、その説明が聞こえるたびに、競り落とす。

 沢山いる競売人は1000も出せばあきらめる中で、私と張り合ってくる男の子がいた、8歳ほどの大きさである私と同じくらいの大きさだ、高位の貴族か王族の子供だろうか、勿論その全てにおいて、私が競り負けることなどなかったが……。

 奴隷の競売が終わった時オークションの終わりが宣言された。


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 最終的に合計の料金は大聖金貨4枚とちょっとになった、全ての商品を受け取り、奴隷の子達は、魔物素材の収納に使っていた空間魔法を改造し、人が入ってもいいものにしたものの中に入れた、この子達は、商会の職員にしよう、そんなことを考えながら屋敷を出ようと廊下を歩いていると、私と張り合ってきた男の子に呼び止められた。


「お前、俺の物を横から奪っていってどういうつもりだ!!」


「人に名乗らせるなら自分からするべきでは?、そもそも……」


「俺はこのテンベルク商業王国の王子、フィリップ・テンベルクだ」


 はっ!?名乗った!?仮面で参加する理由を分かっていないのか?、しかも王子、嘘かもしれないが、嘘ならば不敬罪は間違いない、本当だとしても、この国では基本的に犯罪奴隷以外の奴隷は禁止されていたはずだ、王子が禁止されているものを変えるところに来ていたなど、どちらにしても大問題だ、大丈夫なのかこいつは……、まあいい、売られた喧嘩は買うに限る。


「私はプリンセス商会会長よ、親に言いつけるなり権力を振りかざすなり好きにしなさい、だとしても、私の商会はこの国の武具に手を出し始めているわ、貴方達に何かできるとは思えないけどもね」


 私はこの喧嘩を買った、王子は怒り心頭なのだろう、仮面の端に青筋が見えている、そのまま彼は、「その言葉忘れるなよ」と、安い捨て台詞を言って粗い足取りでそのまま屋敷を出て行った……。

 私は何故こんなことをしたのだろうかと私は馬車に乗りながら考える、このお腹の奥から湧き上がるような憤り、私は怒っていたのだろうか、確か、あの下卑た雰囲気を浴びてからだ、バルドルフの話はよく聞いていなかったが、何度か私を制止していたような気がする、そうして気持ちを落ち着けた私は商会の建物の一棟に帰り、そのまま私の家へと帰った。

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少なくとも絢には嫌がる感情と、人のために怒る心があるのです。

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