6話・部屋にて

 なんか普通に唯さんも入ってきた、こういうのって普通、遠慮とかするものじゃないの?


「絢様二人と何を話してたんですか?」


「気づいてたのね、ちょっと大事な話があってね、話をするためにここに呼んだだけよ」


「私は、席を外した方が……」


「別いいわよ、貴方も呼ぶ気だったし」


「絢様……」


 何だろう……この、子猫みたいなかわいさと、何を求めているのか分からないのがまとまったような表情は、何か返事が欲しい、このまま見つめ続けられるのはつらい。


 △▼△▼△▼△▼


 三十分後、ノックの音が鳴り響く。


「どうぞ入ってください」


「「失礼します……」」


 きっと二人は部屋に入った時こう思っただろう、『こいつらは何してるんだ』と。


 井上先生が固まってしまった、どうにかしてくれ正幸君。


「こ……これは、何をしているのかな?」


 ナイス、何とかこの状況が動きそうだ、でも。


「私にきかないでください、私もよくわからなくてどう触ったものかわからなかったので」


「絢様!?、ひどいです!!」


 このやり取りで、少し笑いが起き、唯は文句を言っている。


「ところで、絢さん、なんで僕たちを呼び出したんだ?」


「ああ、それはね私のスキルについて伝えておこうと思ってね」


「え……スキルの事を話すの⁉」


「はい、これからの信頼のために必要なことなので」


「話すも何も唯さんのスキルは、[陽光][月光]では?」


「とりあえず聞いてください、ここからの事は他言無用でお願いします」


 少し重い雰囲気になり、みんながうなずく


「私のスキルは万物創造というものです、このスキルは色々な物を作ることが出来るスキルです。物質や加工品はもちろん、その気になればスキルすら魔力からつ作り出すことのできるスキルです」


「それは……」


「何といったらいいか」


「絢様にとっても似合うスキルです」


「唯ちゃんそれだけじゃないのよ、何でも作れるってことはスキルを与えるスキルも作れるんじゃないの?」


「はい、膨大な魔力はかかると思いますが、一度作ってしまえば永久に使えます」


「ということは、軍事転用すればどんな軍隊も作れちゃう、絢さんは自分ではやらないと思うけど、もしかしたらこの王国が強制するかもしれない、それだけじゃなくて、絢さん自身を最終兵器みたくするかもしれない、絢さんはそう考えているのよ」


 流石先生思考がとても速く、此処にいる全員にわかりやすくまとめてくれた。


「絢様が、最終兵器に……そんなのは嫌です」


 唯さんは相変わらず素直に感情を出す、それにしても、さっきから正幸君が何か考えこんでいるような顔をしている。


「正幸君?」


 正幸君は何故呼ばれたのか分から無い様だ。


「正幸君が何か考えているのなら、その考えを教えてくれませんか?」


「あ、ああ、どうにかして、絢さんを逃がせられないかなと思ってね」


 一瞬みんな考えるが、その意見に賛同する。


「少し難しいかもしれないけれど、いい案ね」


「良い案ですが、自力で出るのはやめた方がいいかと」


「どうして?」


 今すぐ出るということを否定したことに、先生は少し不思議に感じているようだ。


「自力で出たのでは、指名手配されたり、連れ戻されたりしたら面倒です、それに、もうそろそろ、うまくいけばいい感じに追い出されて、死んだことにされる気がするので、それまで待った方がいいかと思います」


「そう、それは寂しくなるかもしれませんね」


「絢様と離れるなんて嫌です」


「離れても、必ず2年以内に会いに行くから」


「うぅ、絢様~」


 唯は延々と泣き、泣き疲れて寝てしまった、その日はそこで解散し、私と唯を布団に入れそのまま朝を迎えた、その時の約束で私は唯さんの事を「唯」と呼ぶことになった。

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