フライヤーズ
穏やかだった月曜日を最後に、天気の悪い日がずっと続いている。ルイとツーリングでどこかへ行こうという計画も、延ばし延ばしになっていた。でも、今日はスーザンの二十歳の誕生日。週末の金曜日という事もあり、放課後みんなで「フライヤーズ」に集まって彼女の誕生会をする事になった。天井がものすごく高いフライヤーズの店内は、ダンスやカラオケ、それに、ダーツやビリヤードも出来るようになっていて、学生たちのちょっとしたたまり場だった。
「誕生日おめでとうスーザン」
「はい、これプレゼント」
スーザンを囲んで座ると、みんなは次々にプレゼントを渡し、彼女を祝福した。
「みんな、ありがとう。とっても嬉しいわ」
受け取ったプレゼントを一つずつ開いては「なんて素敵」とか、「これ私、欲しかったの」とか言って、スーザンは顔中くしゃくしゃにしながら喜んだ。天使が花瓶を抱えて微笑んでいる置物を手に取ると、
「カナ、これとっても気に入ったわ。あとで花を入れて机に飾るわね。ありがとう」
と言い、私の肩に腕を回すと何度も頬にキスをした。
家族や友人、恋人や知り合いなどに対する感謝や愛情表現の仕方は国によって様々だが、ストレートに相手の感情が伝わる「ハグ」や「キス」が私はとても好きだ。その人の感情が抱きしめる強さや口づけの回数にそのまま表れる。懐かしい人に会ったとき、親しい人と別れるとき、嬉しい事や悲しい事があったとき、ただ見つめ合って言葉を交わすより数倍も(私にとっては何十倍も)、相手の、そして、こちらの気持ちを伝え、感じ取れる最良の方法だ。
「スーザンが気に入ってくれて私も嬉しいわ」
私もスーザンを強く抱きしめ返して微笑んだ。
プレゼントも渡し終え、ケーキやスナックを食べていると、誰からともなく席を立ち、ステージでカラオケをしていた人の曲に合わせて踊り始めた。バースデーガールのスーザンもみんなからもらったプレゼントをテーブルの上に置くと、ステージの前で踊り始めた。ノリの良いルイはまだ席に残っている人たちを嗾けるように彼らの手を引っ張っては、さあ踊ろう、と、席を立たせ、相手が踊り出すまで目の前で踊り続けていた。
「さあカナ。立って踊ろう!」
みんなの踊りを見て楽しんでいた私の前にやって来ると、ルイは言った。
「でも、私は見ている方がいいのよ、ルイ」
「駄目だよ、カナ。さあ、踊ろう」
知美や敦子たちはすでにルイのノリに押し切られて楽しそうに踊っている。
「ほら、カナ、立って」
力ずくでも椅子から立ち上がらせようと手を引っ張るルイ。
「ほら、みんなも楽しんでいるよ。カナも楽しもう!」
私だって十分に楽しんでいるわよ、もうルイってば。
「OK, OK もう分かったわよ、ルイ」
ルイの粘り強さに根負けして私も席を立ち、彼のリズムに合わせて踊り出した。
「カナ、踊り上手じゃないか」
「メルシー」
ルイは笑って私の手をつかみ、なお一層激しく踊りだした。
「今日は素敵なバースデーパーティになって良かったね」
息を切らせて私は言った。
「うん、そうだね。ところで、カナは僕のバースデーパーティもしてくれる?」
「えっ?」
音楽はダンスミュージックからムードのある曲に変わった。ルイは息を落ち着かせ私の手を取ると、チークダンスを始めた。
「僕の誕生日、明日なんだ」
「明日? 明日って二月一日がルイの誕生日なの?」
私はびっくりしてルイから体を離した。ルイは冗談とも本気ともとれる笑みを浮かべている。
「ルイったら、本当のこと言ってよ」
音楽に合わせてルイはゆっくりと私の体を引き寄せ、再びダンスを続けた。
「本当だよ。明日で二十三歳になるんだ」
周りの殆どは踊るのをやめて席に戻り、チークダンスをしている私たち何組かの踊りを見ながら茶化していた。それでも、私は日本人の間で別名「神様」と呼ばれているルイと親しくなり、一緒にチークダンスを踊れる事に正直悪い気はしなかった。ただ、ルイの鼓動や息づかいまでもが感じられてしまう距離間に、多少の動揺は感じていたが。
「ルイ、ちょっとくっつき過ぎよ。みんな見てるわ」
「いいじゃない。僕は気にしないよ。それより誕生日には何をしてくれる?」
ルイは言って、私の腰に手を回すと、わざとみんなの視線を集めた。そして、耳元でくすぐるような息をつくと、僕は誕生日にカナが欲しい、とささやいた。
「ルイったら止めてよ。もう冗談ばかり言って」
私は顔をしかめてルイを見た。
「僕は本気だよ」
「ルイ!」
言った瞬間、ルイはにんまりと笑った。
「OK 分かったよ。でも、ツーリングの約束は果たしてもらわないとね」
ルイが笑いながらそう言って私を離してくれたとき、私の瞳に彼の姿はもう映っていなかった。私の視線はルイを通り越し、その先の入り口の方から歩いてくる男性に釘付けになっていた。
「何を見ているの、カナ?」
ルイは振り向いて私の見つめている方へ目をやった。
「アンドリュー」
私はルイから離れると、小走りにアンドリューの方へ近寄って行った。
「やあ、カナ。ごめん、遅くなってしまったね」
私はアンドリューの柔らかい微笑みを見るなり、嬉しさのあまり自分からハグをした。
「忙しいのに来てくれてありがとう」
受け止めてくれたアンドリューの腕から伝わる力強い彼のぬくもり。
「会えなくて寂しかったよ」
「私もよ」
ひとしきり見つめ合い、私はアンドリューをスーザンに紹介した。
「やあ、スーザン。今日は君の誕生日だってね。カナから聞いたよ。誕生日おめでとう」
アンドリューはスーザンに握手をすると、ポケットから小さな包みを取り出した。
「これを君に。気に入ってもらえれば嬉しいけど」
「あなたってスィートね。ありがとう」
スーザンは喜んで受け取り、一言、二言、二人の共通語――ドイツ語――で言葉を交わすと、びっくりした様子で笑いだした。
「ドイツ語はずるいわ、アンドリュー。何を言っているか分からないじゃない」
私は以前、アンドリューに言われた言葉を真似て、笑った。
「ああ、ごめん、ごめん。スイスのどこから来たのか聞いていたんだ」
「カナ、世の中って狭いわね。なんとアンドリューも私も、それに、ジュリアも同じ地域に住んでいるのよ」
スーザンはそう言ってジュリアを呼ぶと、三人はすぐに意気投合して楽しそうに盛り上がっていた。
アンドリューは誰とでも社交的に振る舞え、その場の雰囲気に一気に溶け込んでしまえるとても気さくな人だ。決して際立って目立つといった印象の人ではない。かといって誰にも気づかれないような陰の薄い印象の人、という訳でもない。ルイが周りを盛り上げる情熱的で艶やかな「真紅のバラ」だとすれば、アンドリューはそのバラをより一層引き立てる「カスミソウ」とでも言えるだろうか。バラは飾る場所や合わせる花々によってときにそのアレンジは難しく、使えなくなってしまう場合もあるが、カスミソウは全ての花々と調和を取ることが出来る。カスミソウを入れる事によって貧弱だった花々を綺麗に、そして、豪華に演出することが出来る。アンドリューはまさにそんな雰囲気を持った、柔らかで優しい印象の持ち主だ。
「やあ、君は確かカナのルームメイトのトモミ? だったよ、ね?」
しばらくして、私の横に来るとアンドリューはそう言って挨拶をした。
「そして君が……」
敦子を見て少し考える。
「ごめんね。名前が覚えられなくて」
「いいんです。気にしないでください。私は敦子です」
敦子は言って握手をした。
「この間はどうも。私は良枝です」
アンドリューが口を開く前に良枝が自分から先に名乗り、
「もし良かったら座りませんか?」
と、アンドリューに椅子を差し出した。
「ありがとう」
アンドリューはにっこり微笑み席に着いた。足を組んでゆったり椅子にもたれると、良枝たちに気楽に話しかけた。少しして、スーザンやジュリアも席に加わり、私たちは日本とスイスの様々な違いやそれぞれの夢について語り合った。一年前からサン・ディエゴに住んでいたアンドリューは、ALIで知り合った日本人から日本の事を色々と聞いていたようで、知美たちが話したたわいない話――東京ディズニーランドは実は東京ではなく千葉にあるとか、横浜とサン・ディエゴは姉妹都市だとか――ですら知っていて、私たちを驚かせた。
「じゃあ、恋愛についてはどうですか?」
当たり障りのない話題から一転して、良枝がアンドリューに訊いた。
「なかなかおもしろそうなサブジェクトじゃない」
敦子が身をのりだして言うと、良枝は気にかけた様子で私をチラッと見た。そして、唐突に、
「遠距離恋愛は可能だと思いますか?」
と言った。
「遠距離恋愛? どうかな? 難しい質問だね」
アンドリューは足を組みなおして私を見つめると微笑んだ。
「二人が本当に愛し合っていれば、ある程度の遠距離は我慢出来るとは思うよ」
「やっぱりそうですよね。心が通じ合っていれば可能ですよね」
良枝が、良かったね、と小さな声で私に耳打ちする。
「でも、あまり長く会えないでいたら、気持ちも離れてしまうかもしれないけどね」
「そうでしょうか? 私は相手を本当に愛しているなら、いくら離れていても心はつながっていられると思いますが」
良枝は顔をしかめると、少しばかり語気を強めて反論した。
「ね、カナだってそう思うでしょ?」
はっきり言ってしまいなよ、と言っているような良枝の目。
「そうね。でも、お互いの努力も必要なのかも」
本当は「絶対にそう思う」と言いたかった。アンドリューとなら、たとえどんなに離れていても、私の心が離れることはないという確信があった。でも、アンドリューの私に対する思いをきちんと確かめた事もないのに、彼にプレッシャーを与えてしまうような事は言いたくなかった。
「それじゃあ、努力をしないと心が離れてしまうっていうの?」
私のどっちつかずの返答が良枝をイラつかせたようだった。
「努力っていうかさ、日本人は我慢強いんだよ。もちろん、会えない分、連絡取り合う事は必要だろうけどさ。そうすることで会えなくても我慢して恋愛続けられるんじゃない? 私の友だちでも遠距離恋愛している子、いるよ。会えなくても好きなのーってね」
私が口をつぐんでいると、敦子が助け舟を出してくれた。
「片思いも考え方によっては思いの届かない、一方通行の遠距離恋愛みたいなものなのかもね」
テーブルに両ひじをつくと、知美が独り言のようにつぶやいた。そして、
「私も今、片思いしているし」
と、更に小さな声でつけたした。
私たち――日本人――は知美の突然の告白に目を見合った。すると、スーザンが、
「日本人と私たちでは恋愛の考え方が根本的に違うのかもな」
と言って首をすくめ、
「私たちには遠距離恋愛なんて絶対に不可能だもんね。だって普通会えなくなったら気持ちも冷めちゃうもの、ねえ?」
と、横にいたジュリアに同意を求めた。ジュリアは、そうだよ、と、うなずき、
「片思いもね。相手が好きになってくれてないのに、自分は好きでいられるっていうのが信じられないよ」
と呆れたように言うと、
「そんなの絶対に時間の無駄だよ」
と、止めの言葉を吐き捨てた。
私はふと、いつだったかルイとメイクラブについて、どこまでいっても水と油のように混ざり合うことのない話をしていたときの事を思い出した。同じ地球に住む者同士なのに、愛し方一つ採ってもこんなにも違う考えを持っている。
私はアンドリューと真に心を通い合わせることが出来るのだろうか。
少し寂しさを覚えた。
十一時過ぎ、そろそろ帰ろうというアンドリューの一言で、私たちは帰る支度を始めた。
「ねえ、誰かルイを見かけた?」
すっかりアンドリューに気を取られていた私は、翌日の予定をルイとまだ決めていなかった事を思い出した。
「そういえば姿が見えないね」
上着を羽織りながら敦子がこたえた。
「誰かを探しているの?」
アンドリューがキョロキョロしている私に気づいた。
「ちょっと待っていてくれる? 友だちが見当たらなくて」
私はテーブルから死角になっていた一角――ダーツがあるところ――にひょっとしたらルイがいるのかもしれないと思って行ってみた。でも、ルイの姿はなく、そこではロベルトやラルフたち数人の男性陣だけがダーツをしながら楽しんでいるだけだった。彼らにルイを見かけたか訊いてみると、随分前に帰った事をラルフがおしえてくれた。
「帰った? それっていつごろ?」
「うーん、そうだなあ。確かカナの友だちが来たぐらいだったかなあ」
そう言って投げたラルフの矢は二十のトリプルリングに綺麗に刺さった。
「ルイに何か用でもあったの?」
「ううん。大したことではないの」
なんで何も言わずに帰っちゃったのかしら。まだ明日の事だって決めていないのに。私はアンドリューたちの待つ出口へ向かった。
「どう? 友だちはみつかったかい?」
私は首を横に振った。
「そうか。じゃあ仕方ないね」
スーザンたちとは店の前で別れ、私たち四人はアンドリューの車で寮へ戻った。つけたばかりのヒーターの風は氷のように冷たい。首筋に鳥肌が立つ。寮に着くと、知美たちは一言ずつアンドリューに礼を言って車を降り、最後に敦子が窓越しから、また今度、遊んでくださいね、と言って笑った。物怖じしない敦子らしい態度にアンドリューは、もちろん、と目を細めてこたえた。すると、敦子は何を思ったのかいきなり腰をかがめ、再び私たちをのぞきこんだ。
「何だい?」
アンドリューが訊くと、敦子は私と目を合わせ、
「カナの事、よろしくお願いします」
と元気よく言うと、私にVサインをして走って寮に戻っていった。
みんなを見送り、二人だけになった車内は急に静かになった。やっと利いてきたヒーターの温かい風が頬にあたる。時計は十二時になろうとしていた。
「今日は忙しいのに会いに来てくれて、それにみんなにも優しく接してくれて、本当にありがとう」
街灯の淡い光に微かに照らされたアンドリューの顔を見つめて私は言った。
「カナには良い友だちがたくさんいるね。今日は来られて良かったよ」
アンドリューは私を見つめ返して言うと、優しく微笑んだ。
「スイスと日本の違いも勉強できたし、ね?」
私は舌をペロっと出して笑った。でも、アンドリューは急に真顔になり、
「カナ、遠距離恋愛は本当に可能だと思う?」
と真剣な眼差しで訊いてきた。私はその眼差しにこたえるように、
「可能だと思う」
と言った。そして、
「相手の事を本当に心から愛しているなら、会えないからといって、その気持ちが冷めてしまったりはしないと思う」
と続け、
「それに、もしも会えなくなって、それで簡単に気持ちが冷めてしまうなら、それは本気でその人を愛していないという事だと思うもの」
と正直に思っている事を言い添えた。
「そうだね。離れたから気持ちが冷める、というのは本当の愛ではないのかもね」
アンドリューは言い、
「でも、人間は弱い生き物だから、離ればなれで相手を想い続けるのは、本当に大変な事だと思うよ」
と、優しくつけたした。
「それじゃあ、アンドリューは、遠距離恋愛は不可能だと思うの?」
可能だと言ってほしい。祈るような思いで訊いた。
「カナは好きな人と離れていたら、相手が何をしているのか、何を考えていのるか分からなくて辛いとは思わない? 寂しくはならない? 僕はなってしまうよ」
アンドリューの言葉に胸が苦しくなる。
「だからこそ、お互いを信じて心が離れない努力をする必要があるんじゃないの?」
私は半ばすがるような思いで言った。
「それが人を愛するっていうことなんじゃないの?」
「そうなのかもしれないね……」
アンドリューはハンドルに体をもたれてどこか遠くを見つめていた。それから少し間をおくと、
「Long -distance love」
と小さな声でつぶやいた。
――でも、あまり長く会えないでいたら、気持ちも離れてしまうかもしれないけどね。
アンドリューが良枝に言った言葉が頭をよぎる。やはり私たちの関係は、私が帰国するまでの期限付きの関係なのだろうか。アンドリューにとって私という存在はその程度のものなのだろうか。私一人で思い上がっているだけなのだろうか。確かめたい。アンドリューの気持ちを確かめてみたい。私はアンドリューの横顔を見つめると、
「アンドリュー、私はあなたが好き」
と勇気を振り絞って言った。
「会った瞬間からあなたが忘れられなかったの。まだ出会って間もないけど、この気持ちに嘘はない。だから、あなたの事をこれからももっと知りたいと思っている」
温かいヒーターの風が頬をうつせいなのか、それとも緊張のせいなのか、私の口の中は干上がった大地のようにカラカラだった。
「カナ」
突然の告白にアンドリューは戸惑っているようにも見えた。
「日本に戻っても私のこの気持ちは変わらない。たとえアンドリューが私を忘れてしまっても、たとえもう会えなくなってしまっても、私はずっとあなたが好き」
私は高ぶった感情を抑えきれず、自分の思いをはき出してしまった。
「だって、こんなにあなたを愛しているんだもの」
大胆な告白をしてしまった私はアンドリューの顔が見られなかった。きっとアンドリューは困っている。アンドリューの気持ちを確かめてみたいだなんて思わなければ良かった。思いをはき出したあとに襲って来る言いようのない後悔と切なさ。私はアンドリューの顔を見るのが怖くて、ただうつむいていた。泣いてはダメ、泣いてはダメ。後悔で溢れ出そうになる涙を押し戻すように、私は何度も自分の心に言い聞かせていた。でも、その思いとは裏腹に、いつの間にか私の目からは大粒の涙が溢れ出し、握り締めていた手の上にポロポロとこぼれ落ちた。もう止められなかった。
「おいで、カナ」
さあ、泣かないで。アンドリューはそう言って、私を優しく腕の中に抱き寄せた。
「気持ちを聞かせてくれてありがとう。僕もカナが好きだ。初めて出会ったときから、他の人とは違う何かを感じたんだ。だから君を失いたくない」
「アンドリュー」
「この気持ちは本当だよ」
涙の止まらない私の瞳を真っ直ぐに見つめてアンドリューは続けた。
「でも正直、先のことはまだ何も分からない。ただカナとなら、不可能を可能にする事が出来るような気がするんだ」
私は感極まって、アンドリューの胸に顔を埋めて泣いた。
「二人の気持ちが同じだと分かったんだ。もう泣かないで、カナ」
アンドリューは穏やかに微笑み、私の涙を何度も拭ってくれた。
「だって嬉しいんだもの。でも、嬉しいのに、もうすぐ会えなくなると思うと……」
アンドリューは言いかけた私の口もとを手で優しくふさいだ。そして、
「僕たちはまだ始まったばかりじゃないか。それにカナはまだここにいる。焦らないでゆっくり行こう。お互いを信じて、いいね?」
と言って私をしっかり抱きしめたあと、優しく唇を重ねた。
それは十九歳の私にとって初めての口づけだった。
「カナ、愛しているよ」
耳元で熱い吐息と共にアンドリューはささやいた。
「私も愛している」
私たちはもう一度口づけを交わした。熱く、激しく、大胆に。
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