半鐘にて
「おい早く釣鐘をひけ!」
「嫌です」
「早くしろ!!」
「嫌だ。大火にのまれて悉く灰になれ」
「くそが…」
「梯子ですか、探してるのは」
「白変種どこに隠しやがった!」
「隠してない隠してない〜破壊しましたが」
「どうして…降りて来い外道」
「外道で非道なのはお前達だよ。
「――人を代表して謝罪する。申し訳ない。この通り」
「許せる筈がない」
「人間に生まれたことが恥ずかしい。悔悟すら覚える」
「そうですか」
「けど、それでも同族を守りたい」
「なら走り回った方が得策ですよ。火事だ火事だってね」
「なんでもする。だから鐘を鳴らしてくれ」
「こうも立場が覆ると滑稽さを感じます」
「頼むよ。慈悲を」
「なら指で割腹して下さい」
「…」
「しますか、しませんか」
「する。その代わり約束してくれ」
「ええ、しますとも」
「――ほっっお」
「まだ街全体は燃えてませんね」
「いぃぎいい」
「見えますか。場所が低いから
「私が。私が皆をっっ」
「しかし寒いですね」
「むっ」
「自らの手で腹を裂くなんて――気でも違うんですか」
「街ぃには…おめぇのぉ仲間だって」
「どうせ秋扇の如き扱いです」
「ごしょ…う。だからぁ」
「嗚呼、漸く僕にも幸福が」
「ひけぇ」
「ふ〜ふふん。僥倖の湯水〜」
大火の晩に聴こえたのは、悲鳴でも鐘の音でもなく――鼻歌だった。
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