文学的遊戯

「吝かじゃあないん――だからねっ」


「では我輩が好きなのか!?」


「いえ好きではないです」


「そうか…。なら行こうぞ」


「休憩するのですか」


「誰もいこう――とは言っておらん」


「どうでもいいですが僕は左利きです」


「ほぅ」


「この手腕で立派な手柄でも立てて来ます」


「それは偉功いこうだな」


「ええ。場面とは移ろい死んでいくもの」


「それは移行だな。と言うか、変わっていく様子を感じ取れないのは我輩だけか」


「そう。君だけ」


「君!? 様は何処へ」 


「とてつもない威厳を示して下されば様呼びに戻します」


「どうだ!」


威光いこう足らず」


「これでどうだぁー!」


「あ無理っぽい」


「止めどもなく涙でそう」


「その場合は拭いますよ」


「拭うのではなく抱け」


「なにを?」


「謝罪の念を、だ」


「それは嫌なので」


「…なんだこれは」


「抱擁」


「あのな」


「はい」


「いだけ――と言ったのだ。頭の中で文字を起こしていだけとけの近似性に気づいて、我輩を揶揄うのはやめろ」


「やめません」


「離せ」


「解りました」


「離すな」


「自家撞着」


「…もういい。今度こそ行くぞ」


「はい――」

 

 ――君の意向の方へ。

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