書斎にて

「旦那様」


「どうした執事」


主人様あるじさま


「紛らわしいぞ執事」


「申し訳ありません、御当主様ごとうしゅさま


「全く反省の気持ちが伝わらない」


「それなら脱ぎます」


「やめなさい」


「ところで以前から思っていたのですが、ああ旦那様に惚れている――と言う意味ではございません」


「要らぬ訂正ご苦労様。して続きは」


「なぜ…どうして私なんかを購入したのですか」


「元々白変種に興味があったんだ。なによりも白い髪、それは存在する物質のなかで」


「長いです端的に」


「その、なんだ。君が好みだった、から」


「ふっ」


「いま鼻で笑ったよね?」


「気の迷いですよ、旦那様」


「気の所為の間違いだろ、執事」


「そうですね。でもね、人間じゃない私に、家畜同然の私に――好意を抱くのは、それこそ気の迷いです」


「君は人間さ」


「違います。生命ですら、ないのです」


「それでも君は人間さ」


「旦那様」


「ほらね。ただの物体は泣かない」


「旦那様。私は本当に幸せでした。人らしく生きれたこと感謝申し上げます」


「執事…」


「態々お仕事部屋に寝台まで」


「執事。おい、執事。――ありがとう。そして左様なら。さて次はどの白変種にしよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る