第5話『アクト地雷』
パペッティア
005『アクト地雷』晋三
そのRVは百メートルほど走ったところで大爆発した。
一秒でも遅れたら夏子の命は無かっただろう。
呆けていると、さっきすれ違った方のRVが戻ってきて、夏子の目の前でドリフトしながら停車した。
キキーーーーー!
「早く乗って!」
車から飛び出してきたのは本物のみなみ大尉。やっぱりさっきのは特殊戦用のアクト地雷だ!
そんな事情の分からないマリアは目を丸くして金魚みたいにパクパクしている。
「まだローンも終わってないダンディーが、ダンディーってのはこの車の名前ね。ダンディーが調子悪くって、やっと調子がもどってカットビで来たら、ダンディーと同じのとすれ違うじゃない。運転してるのはあたしソックリだし、助手席にはあなたが乗ってるし、あ、挨拶まだね、陸軍特任大尉の高安みなみ(懐からIDを出した)どう、制服姿のあたしもイケてるっしょ? ハハ、自分で言ってりゃ世話ないか。本当だったら首都のあれこれ案内しながらと思ってたんだけどね、あたしソックリなアクト地雷が現れるようじゃウカウカしてらんないわぁ。しかし決心してくれてありがとう、舵司令は何にも言わないけど、あなたのことを頼りにしていたのはビンビン伝わってきてたからね。あたし以心伝心てのは苦手でさあ、夏子の決心がもう一日遅れてたら司令とケンカしてたところよ。あ、夏子って呼んでいいわよね? あたしのことは『みなみ』でいいから。あ、ごめんね、あたしばっか喋っちゃって。なんか聞きたい事あったら、別になくってもいいんだけどね……」
「あ、いろいろあり過ぎて……呼び方は『ナッツ』でいいです。学校じゃそう呼ばれてたから。で……えと、高安大尉?」
「ハハ、ただのみなみでいいわよ」
「いきなりは、その……」
「あ、そだよね。あたしってば一方的に距離縮めちゃって。じゃ、みなみ大尉、いやみなみさんだ」
「みなみさん。あたし、さっきまであの車に乗っていたと思ったら、いきなり歩道にいて、で、乗ってた車が大爆発で……なんか訳わからないんですけど」
「あれはアクト地雷って人型の地雷。一見人間そっくりだけど、AIじゃないからまばたきとか心拍とかが微妙に違うし、プログラムされた言葉しか喋らないし、なんたって基本は地雷だからね。えと、車から歩道に移動したのは夏子の能力でしょうね、ベースに着いたらテストしてみよ。しかし、いちばん驚いたのは、危機に直面したらとっさの判断で能力が使えることでしょうね。司令も……もとい、お父さんもお喜びになると思うわ」
「いろいろ覚悟はしてきたんですけど、えと、あたしは首都でなにをするのかなあ?」
「いろいろ」
「いろいろ?」
「う~ん、あんまし予備知識はね……直接お父さんから聞くことになるわ、その方がいい」
「そうなんだ」
「ハハ、その方がワクワクしていいじゃないの」
ズズーン!!
そのとき直下型地震のようなショックがきた。
「わ、地震!?」
「ちがうわ、いまのは……クソ! こんなに早く来るなんて反則よ!」
キキーーーーー!!
ふたたびショックがあって、ダンディーは急停車した。
☆彡 主な登場人物
舵 夏子 高校一年生 自他ともにナッツと呼ぶ。
舵 晋三 夏子の兄
井上 幸子 夏子のバイトともだち
高安みなみ 特務旅団大尉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます