第2話 ①地下牢
ウェインライト城の地下牢に、シュヴァリエはいた。
彼は気を失っていて、しばらく眠っていたが、やがてゆっくりと瞼を開けた。
そして重い体を起こす。
「うっ・・・ここは・・・?」
シュヴァリエは辺りを見回した。
一応ウェインライトの軍人なので、その場所が自国の牢屋だということがすぐに分かった。
(何故こんな所に・・・? そうだ! 姫様の結婚式に、いきなり魔物が・・・)
シュヴァリエは意識を失う前の出来事を思い出す。
次第に神父への怒りがこみ上げてきた。
シュヴァリエは全ての元凶が、リュヌだったことを知らない。
(ああ…姫様は無事だろうか? 僕がしっかりしていれば…)
すぐ隣に誰かが倒れている。
シエルだ。
彼はまだ眠っている。
シュヴァリエは親友を揺さぶり起こした。
「シエル様...!」
声をかけると、シエルは瞼を開けて、ゆっくり起き上がった。
シュヴァリエは安堵のため息をつく。
「ここは…どこだ?」
シエルは目を擦りながら、辺りを見回す。
「恐らく、ウェインライトの地下牢でしょう」
シュヴァリエが静かに答える。
「地下牢? なんで俺達が捕まらなきゃならないんだよ」
「わかりません...あの神父が怪しいと思うのですが」
シュヴァリエに言われるまで、シエルは神父のことを忘れていた。
「えっと...マリアちゃんの結婚式だったんだよな? 神父が魔物を召喚して...
そういえば神父の背中から翼が生えて、自分はルシファーだとか言ってたな」
シエルはあぐらをかきながら、意識を失うまでの出来事を回想した。
「十二枚の漆黒の翼...本物のルシファーか」
ルシファーは有名な天使だ。
創造の女神クレエが一番初めにつくった天使は、双子だった。
ルシファーとミカエルだ。
兄のルシファーは天界の天使を統率する、天使長の地位を任された。
彼は長年天使長だったが、約二十年前に反逆を起こす。
ルシファーは天界の三分の一の天使を仲間に引き入れ、女神と戦った。
彼は女神に代わって、天界を支配する神になろうとしたのだ。
しかし戦いに敗れ、天界を追放された。
美しい緋色の十二枚の翼は、堕天した際に、黒に染まった…と言われている。
「何でルシファーがこんな所に...マリアちゃんの結婚の邪魔をして、なんの得があるんだ?」
シエルは疑問に思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます