第11話

「おはようございます」


 朝、目が覚めると2階に向かった。空を飛ぶ種族だから、高いところの方が好きで、普段は2階にいるそうだ。玄関も実は二階で、昨日私達が入ったのは裏玄関だったらしい。


「おはようですの。そうだ、紹介しますの。ダーリンですわ」

「エードだ。ハニー…彼女とは夫婦でな。話は聞いているよ。よろしく」

「よろしくお願いします。私は静香、彼は日向。私の弟です。えっと…。昨日は、どうも」

「ああ」


 エードさんが苦笑する。そう、昨日の門番さんだ。


「今日は物資を調達するんだって?」


 頷く。そういえば無口なキャラだった。忘れてはいない。自己紹介は喋んないと迷惑になるからだ。


「じゃあ、俺も今日はやることないし、一緒に行くか。行ってくるよ、ハニー」

「愛してますのダーリン」


 会話が成立してない気が。気の所為だな、うん。


「よし、行こう!お前たち、朝食は住んだのか?」


 もちろんだ。軽く頷いた。あれ、これ結構楽かも。


 って、エードさん?まさか、そこから降りる気!?たしかに玄関はそこだけども。


「何してんの姉ちゃん。行こうよ」

「そ、そうね」


 日向は結構勇気あるな。私にはない!いくら私達がGで落ちても痛くも痒くもないとはいえ、怖いものは怖い!


 あ、飛び降りてっちゃった…。

 なんで余裕で着地してんのよ。あんたそこまで身体能力高くないでしょうよ。

 ん?身体能力?…鍛えたじゃん。


 忘れすぎでしょ私。


「すごいなお前たち。でも、なんで羽を使わないんだ?まさか、飛べないのか?」


 悲しい顔で頷いた。


「そ、そうか…。なんか、ごめんな?で、欲しい物はあるか?」

「植木鉢」


 桃があんまり元気ないからな。実がなるくらいに成長しないと話せないらしいし。


「ああ、あの木か。でもよ、あれはやめておいたほうがいいぜ?あれの実はな、おっそろしい殺戮兵器なんだよ」

「大丈夫です、わたしたちが食べていたのはあの実ですから」

「お前ら、見ない種族だと思ったが、あんなもん食べんのか。でも、食べ過ぎは良くないぜ。若木を増やすぐらいはしないと、あの木は意地が悪いからな」


 意地が悪い?


「木に意志があるんですか?」

「あるさ。あいつらは長く生きてるから、自我くらいは芽生える。まあ、感情なんてなく、ただ考えるだけだが、それでも性格やら好みやらはある。俺たちと共生してるのは大体良いやつだな。って言っても、平和主義なだけだが」


 なるほどね~。じゃあ、話しかけてくるのは珍しいことではない?のかな?


 でも、あいつそこまで悪いやつじゃないよね。あ、種の増やし方はあくどいのか。


「ほら、ついたぞ。ここでもらえる」


 そこは、一軒の家だった。


「ここはお店なんですか?」

「店じゃねえ、家だよ。ここに住んでるのは手が器用なやつでな。頼めば作ってくれるだろう」


 なんか、違和感が。店なんてない、とか?


「姉ちゃん、多分、ここにお金はないんだと思うよ」

「どういうこと?」

「昨日から気になってたんだけど、二人共"買う"じゃなくて、"貰う"って言ってたんだ。交換用の物とかもいらないみたいだから、多分ここは、物々交換ですらない、助け合いで成り立ってる街なんだ。ここに家を構えるなら、多分、僕たちもなにかしなくてはいけないんじゃないかな」

「そうなのね。考えておくわ。でも、よく見てるわね」

「当然さ」


 日向が得意気にいう。

 なるほどね〜、平和。平和だわ、昆虫の世界。


「なるほど。わかりました。じゃあ、よろしくお願いします」

「おう」


 エードさんについて中に入ると、そこにいたのは、ドワーフだった。


 なんで?魔蟲がいるんじゃないの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る