第6話

「朝だよ」


 桃の声で目が覚めた。うーむ、木の声で起きるというのは、なかなか素敵…かな?


「おはよう」

「おはよ〜」


 日向も起きてきたようだ。


「朝ごはんはどうする?桃?それとも、ハチ?」


 あなたはお母さんですか?


「ハチかな。消費期限がね。早く食べちゃわないと」

「消費期限…ああ、元の世界の話か。そういえば夜、一匹孵化してまた桃が増えたよ」


 さらっと危険なこと言ったな。近づきさえすれば逃さない、とか、昨日言ってたし、それなりに強いんだろうけど。


「うん、なれると美味しいかも?」

「2日じゃ私はなれないわ…」


 いつも(?)のように幼虫を食べる。


「そうだ、桃試食してみる?」

「いいね。なんかこう、デザートが欲しかったんだよ」

「そのデザートがなにか知らないけど、食べてみると美味しいよ」

「じゃあ」


 しばらくして、私達の前に桃が一欠片差し出された。


「…え?」

「これだけ?」

「そりゃそうだよ。これ以上食べたら死んじゃうよ?」

「いや、そういうことじゃなくて…」


 なんかこう、私達にだけ毒を無効化するとか、そういうのを想像していた。


「まさか!そんなことできるなら、人間に実験されないよ」


 言われてみれば、そうですけどね。


「大丈夫大丈夫!君たち、生命力強いらしいし?死にはしないから!」

「それ、死にかけはすると…?」


 …その日一日、腹痛で動けなかった。


 ◇


 一ヶ月後、ハチの備蓄も減ってきた頃、やっと桃を丸々一個食べきることができた。腹痛もない。


「良し!これでもう大丈夫だ。あとはいくら食べても問題ないよ。

 実は一個が絶対致死量でね。もちろん、欠片でも君たちみたいなのじゃない限り死ぬんだけど、一個ならどんな化け物でも死ぬんだ。あ、君たちは耐性つけたから大丈夫なんだけどね」


 なんというか、化け物以上と言われたような気がする。


「さて、これから味わって食べられるよ。1つ食べて見て」


 恐る恐る食べると、お母さんの作ってくれたグラタンの味がした。


「お母さんのグラタンの味…」

「お母さんのおでんの味…」


 どうも、人によって味が違うようだ。 


「フフ、これはね、今一番食べたい者の味がするんだよ。誰も食べてくれないので、美味しければなんとか…と思った苦肉の策なんだよ」


 なるほど。おいしい。


「さて、次の問題に取り掛かろう」

「ふゅふぃのふぉんふぁい?」

「何かしら?」

「いや…えっと、日向はなんて言ったの?」

「次の問題?」


 まだモゴモゴしている日向に代わって言った。


「ああ、そういったのか。君たちが桃を持てない問題だよ。忘れてたの?」


 ああそういえば、そんな問題もあったか。


「人化できれば一気に片付くんだけどなぁ」


 桃を飲み込んだ日向が言った。


「そうね。人化できればいいのに。ねえ何かいい案はない?」

「任せてよ。曲がりなりにも千年以上生きてるから」

「せ、千年…呼び捨てやめようかしら」

「いいよそのままで。ねえ、ステータスを見せてくれない?」

「いいわよ」


 ステータスは、意識すれば見せることができるらしい。


「すごいね。レベルが四十だって」

「え?…あ、そっか。ハチを倒したから」


 随分と変わっているようだ。確認してみよう。


 種族:G 年齢:一ヶ月くらい

 性別:女 レベル40

 種族特性Ⅰ:逃げ足が速い 5000

 種族特性Ⅱ:生命力が強い 10000

 個体特性Ⅰ:頭が良い 500000

 個体特性Ⅱ:運動神経が良い 500000

 個体特性Ⅲ:美人 1500000

 個体特性Ⅳ:日向の姉 2000000

 個体特性Ⅴ:悪食 1500000

 称号

 異世界の嫌われ者 称号階級神

 異世界の人気者  称号階級神

 桃と契約せし者  称号階級王

 エイティスの天敵 称号階級臣

 スキル

 なし


 なるほど。よくわからん。


「ねぇ、特性の横の数字って、前までカッコだったよね?」

「ああ、レベル1のときの表記だね。それは、MAXステータスを表してるんだけど…」


 桃が言っていたことを整理すると、こんな感じになる。


 種族特性

 ・平均が1万〜2万くらい

 ・1レベルごとに100ぐらい上がる。レベルの上がり方によって誤差があり、レベルが上がらなくても上がったりする(桃とか桃とか桃とか)

 ・MAXステータスは種族ごとに決定している。

 ・平均2つくらいで、ドラゴンクラスになると十個以上あるらしい。


 個体特性

 ・平均が10万〜20万くらい。

 ・1レベルごとに上がる量は、最も高い称号の階級によって決まり、神だと1レベルでMAXになる。

 ・行動によって獲得可能。ただ、取るのは大変。基本無理。

 ・頑張ればレベルアップしなくても上がる。

 ・平均一つ。2つあれば上々、3つは化け物、4つ以上はありえん。


 称号

 ・称号階級は神が一番上、滅が一番下(というかマイナス)。

 ・称号を見せると、相手に恐怖を与えられたりする。例えば、エイティス(ハチ)に『エイティスの天敵』を見せると、逃げていく。

 ・『桃と契約せしもの』は、魔蟲が逃げていく。

 ・『同族(基本人)殺し』などは隠すことができない。

 ・滅や死、墜の階級のものだと、病気になったり死んだりする。そんなものを得たものは過去いない。


 スキル

 ・人(亜人族含む)以外は持てないので、覚える必要性なし。

 ・一応魔法もあるが、魔力が必要で、これはやっぱり人しか持たない。


 と、こういうことらしい。


「要約すると君たち強いってこと。って、『美人』なんて持ってんじゃん」

「持ってるけど、それがどうしたの?」

「人化できるよ、これ」

「「え?」」

「美"人"でしょ?」


 た、確かに…。

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