第2話

 気がつくと、そこは見知らぬ草原だった。


 あら…、ここはどこかしら?


 言おうとして、声が出ないことに気づく。慌ててあたりを見回すと、私と同じくらいの大きさのゴキブリが一匹。

 目があった。…あ、こいつ日向だわ。遂にゴキブリになっちゃったのか。ってことは、もしかして私も?


 慌てて自分を見下ろすと、やはり茶色い。うわあ。改めて見るとキショいな。

 しかしとりあえず、隣の日向(推定)と会話ぐらいはしなくては。

 とはいえ、声は出ないしな…。あ、でもそっか。筆談ならいける。

 この手…うわいっぱいあるな。私はゴ…今後はGとよぼう。本当にGになってしまったらしい。


『あなた日向?』


 ふむ、こんな感じか。見えるかな?


『うん。あんたは姉ちゃんで合ってるよな?』


 よし、これで会話できる。


『あってるわよ。まさか、神の託宣がホントだったなんてね』

『僕もびっくりしたよ。で、ここはどこかな?』

『そうね。希望としては、異世界であってほしいわ』

『じゃあさ、ステータスオープンとかしてみたら?』

『いいわね。というか、出てこなかったら困るわ。じゃあ行くわよ。せ~の』


 ステータスオープン。


『あ、出てきたよ』

『そうね。でも…』


 読めない。


『これ、何語だろう?』

『きっと異世界語ね。翻訳機能とかついてないのかしら』


 言った(正確には書いた)瞬間、ステータスプレートが日本語に切り替わった。


種族:G 年齢:生まれたて

性別:女 レベル1

種族特性Ⅰ:逃げ足が速い(50000)

種族特性Ⅱ:生命力が強い(50000)

固有特性Ⅰ:頭がいい(500000)

固有特性Ⅱ:運動神経がいい(500000)

固有特性Ⅲ:美人(1500000)

 称号

異世界の嫌われ者 称号階級神

異世界の人気者  称号階級神

 スキル

 なし


 なるほど。


『出てきたわ。今写すわね』


 そう言って地面に書いていく。


『なるほど、僕とほとんど同じだ。っていうか、性別以外変わらないんだけど!?』

『え…。まさか、あなたの固有特性Ⅲ?って、美人なの?』

『そのとおりだよ。まあ、美形とおんなじ感じでしょ』

『美しい人ってだけだもんね』

『うん、きっとそうだよ。ところで、このシステム、結構不便じゃないか?』

『そうね、口で話す方が早いわ』

『どうしたらいいかな?』


 たしかに不便だ。いちいち地面に書くのも面倒だし、それにここは野生だ。いつ緊急事態に陥るかわからないから、情報の伝達手段は必要だろう。


『ねぇ、この固有特性っていうのにさ、日向の姉とか、静香の弟とかないかな?っていうか、付け加えられないかな?できたらなんか話せそうじゃない?』

『そうね、やってみる価値はあるかもしれないわ』


 そういうわけで、適当に固有特性増えろ!日向の姉って増えろ!

 と念じ、ステータスプレートを開いた。


『増えてるよ!』

『すごいわね。カッコの数字は…二百万!?』

『やっぱり、姉弟の絆は強いのかな』

『そういうことでしょう。だと思いたいわ。で、普通に話せるか、だけど…。何しろ、念話みたいなの、使ったことないしね』

『やっぱイメージでしょ。例えばさ、このステータスプレートをスマホだと思って、僕に連絡するみたいな感じてやってみたら?』

『なるほど。試してみるわ』


 日向はゲーマーだけあってイメージが豊富だな。


「日向?繋がった?」

「完璧だよ姉ちゃん!すごいねこれ、意識するだけで繋がるよ。本当に話してるみたいだ。でも、姉ちゃんにしか聞こえないんだよな」

「これは便利ね。相手に作戦を聞かれる心配がないもの」

「まあ、作戦を立てなければいけない相手なんて、めぐり逢いたくないけどな」

「それはそうね」


 とりあえずその日は安全そうな木に登り、二人で隠れながら身を寄せ合って寝た。

 登る途中、一度木から落ちたが、痛みはほとんど感じず、Gの生命力の高さを実感できた。


 あと、結構大きかったのが自分たちの体の大きさがわかったことだ。

 前世(死んだのかはわからない)の私達が寝転んでいるくらいの大きさで、厚みもそれくらいだった。

 まあ、あくまでも木を基準としているわけで、この一見学校の桜の木みたいな大きな木が、1メートルくらいの木だった場合はノーマルGなんだけどね。


 いずれはGを卒業したいけど、まずは探索からかな。敵がいるかも確かめなきゃだし。


 先は長いようだが、せっかくの異世界だ。小さい頃からの教育のおかげか、動揺もあまりない。

 まあこれは、日向がいるからかもしれないけどね。


 私達の異世界ライフが始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る