第19話、ウズシオ
「寒かったら、ひざ掛け使ってね」
メグミは、副操縦席に座ったナンバに言った。
「ありがとう」
天気は、快晴。
近くに、スーパーハリケーンはないようだ。
「後ろのキャノピーちょっと引っ張って」
「はいよ」
ナンバが2座席分の大きさのあるキャノピーを後からスライドさせてメグミに渡す。
パタン
メグミが、キャノピーを閉じた。
メグミが、スロットルを上げる。
「パラララ」と言うエンジン音が。「バアアアアア」と言う音になり、紅い飛行艇は静かに離水した。
まずは、”ウズシオ”がある、旧”ナルト海峡跡”に向かう。
水没したビルの屋上にある、飛行標識を確認しながら、四国の方へ飛んだ。
途中、元三重県の伊勢市の上空を通過した。
「”いせ”神宮も”いづも”に行ってるみたいだね~」
「本当だ」
振り向いて、副操縦席のナンバに笑いかけた。
鳴門海峡大橋の巨大な柱が見えてきた。
道路部分は、海中に沈んで海水越しにうっすらと見えている。
その上を、渦が沢山巻いていた。
ナルトの”ウズシオ”である。
◆
”旧ナルト海峡跡の人口渦潮”
昔から、淡路島と四国の狭い海峡を通る潮の満ち引きによって、”渦潮”が発生すると言われてきた。
しかし、”大異変”による海水面の上昇により、淡路島と四国の土地が3分の2になっても、渦は巻き続けていた。
(潮の満ち引きが無くなっても、”大異変”前の潮の満ち引きに合わせて渦が巻くようだ)
現在ナルト海峡は、幅が広がりとても海峡とは言えなくなっている。
昔から、”ナルトの渦潮は海底にある巨大なスクリューで作られている”と言う噂があった。
この噂の真偽は、”大異変”後の混乱により有耶無耶のままになっている。
”オーサカ国”が近いこともあり、日本政府も公式には何も言っていない。
”科学論文投稿サイト”に、”ウズシオ”の研究を投稿しても、何者かによってすぐ消されるそうだ。
◆
「……空軍の潜水艦の航路も外されてるんだよな、ここ……」
「……うん。 海軍の気象部も”ウズシオ”が危ないから近づくなって言ってる……」
「まっ、いいかっ」
「そっ、そうだねっ。あはは」
「上から見るの初めてなんでしょう?」
「うん。そうそう」
二人は気を取り直して、雄大な”ウズシオ”の光景を、上空から楽しんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます