第17話、レンゲツ
デートの夜、連絡先を交換した携帯に、電話を掛けた。
食事と、論文のことを聞いてくれた礼を言う。
しかし、初デートに、ナマコの話を熱く語って大丈夫だったのだろうか?
話題を変えようとしても、それとなく戻されていたような気がする。
「こ、こちらこそ」
携帯越しに、感極まったような声がした。
次に空いている日を聞いて、こちらからデートに誘う。
「飛行艇でちょっと飛ぶから、ラフな格好で来てね」
次に会う日は、5日後に決まった。
◆
メグミが、海軍から借りている家は、球形で屋上部分が平らになっている。
海底に、鎖でつながれており、スーパーハリケーンのときは窓のシャッターを閉めてのりきる。
海上の1階部分は、飛行艇のガレージになっていた。
”
ガレージ内の海水は抜かれていた。
「ふんふんふ~ん」
メグミが、鼻歌交じりに、紅い飛行艇のエンジンをいじっている。
◆
”
大異変の前、まだ大地が沢山あったころ、”
この車は、”キットカー”と言われ、エンジンやシャシー、タイヤなど、プラモデルの様に自分で組み立てることが出来た。
後の海軍がこれを真似て、”水無月”をベースに売り出されたのが、
”キットプレーン、
である。
二重反転プロペラが後ろにある”推進式。
楕円オーバルピストンによる1気筒8バルブ、OHV,V型32バルブ4気筒水素エンジン搭載。
クラッシックカーならぬ、クラッシックプレーンである。
◆
メグミは、論文の懸賞金、約300万円で、レンゲツを購入。
こつこつと自分で組み立てたのである。
留守にする前に、抜いていたプラグをエンジンに着け、エンジンカウルを閉めた。
「いや~。複座式にしといてよかったよ~」
「まさか。男の人を後に乗せる日がくるなんて~」
「えへへ」
照れたように笑う。
充電しておいたバッテリーを繋ぎ、燃料タンクに海水を入れる。
「……上がっちゃおうかな~」
携帯のスーパーハリケーン情報をチラ見しながら、かべに掛けてある、ゴーグルとフライトジャケットを手に取った。
エンジン横にあるイグニッションをONにして、エンジンにクランクを刺した。
「よいしょっと」
体重を掛けながらクランクを回す。
「ヴ、ヴ、ヴ、ヴ」
もう一回。
「ヴ、ヴ、パラララララララ」
「よしっ」
エンジンが掛かった。
ガレージに注水して、扉を開く。
最後に、船の部分の固定を外し、家の外に出た。
メグミは、しばらく”飛ぶためだけ”の飛行を楽しんだ。
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