第15話、イワオ
気象部本部に帰って来た。
必要な書類と、メインモニター内のデータを確認して提出すること。
”水無月”の”避難潜水後、整備”の依頼に3日かかった。
基本、勤務は週休二日である。
しかし飛行艇で外に出ている時は勤務日や休暇の区別がつけづらく、1カ月連続で働いたら、8日間連続で休み、という感じになっている。
メグミは、今回2カ月ちょっと外に出ていたから、連続で16日休みがあることになる。
休みに入った次の日に、ナンバ艦長からメールが入った。
内容は、三日後空いてますか、約束していた昼食を一緒に食べに行きませんか、とある。
大丈夫です、と返事した。
予約した店にドレスコードがあるので、ドレスでお願いします、と書いてあった。
潜水艦の艦長とはいえ、生活に必要なものはほとんど支給されるため給料は安い。(一年の半分以上を潜水艦の中で過ごすため)
「(出費は)大丈夫なのかな?」
◆
メグミは白いマーメイドラインのドレスで、待ち合わせの自家用船、発着場に来ていた。
派手すぎないメイクが良く似合っている。
スラッとしたジャケット姿のナンバが待っていた。
「すまない。借りられる船がこれしかなかった」
視線の先には、一言で言うと大きくて”四角い”船が止まっていた。
「ふふふ。タフな”イワオ”だ~ 男の船だ~」
メグミが思わずこの船のCMソングを歌いだした。
◆
自家用の水陸両用船”イワオ”
四角いライトに、四角いボディ。
四角い窓に、四角い荷台。
荷台は、箪笥くらいなら余裕で入る広さがある。
どこを取っても”厳つい”としか言いようがない船、それが”イワオ”だった。
何故このような船になったかは、開発したのが”陸軍”だったためである。
開発当時、陸軍は海の上のジー〇、もしくはハンヴィー(メガ〇ルーザー)のような船を欲しがった。
開発初期は、ここまで厳ついわけでもなく、普通の船だった。
しかし、当時の陸軍の高官の一人(今某戦艦の艦長をしている)が
「海のハンヴィーだったら、スーパーハリケーンくらい余裕で乗り越えないとね~」
と言う無責任な発言が、開発陣の職人魂に火を点けた。
ただでさえ不慣れな船の開発に、キレてしまったらしい。
実際、オプションである完全固定式のシートベルトを着けると、スーパーハリケーンを”避難潜水”なしで乗り越えることが可能である。(沈まないだけという説もある)
水陸両用なのは、陸軍の最後の意地だ。
◆
「いいよ。いいよ。ナンバ…君」
「私、こういうの大好きだよ。ふふふ」
「よ、よかった……」
大きくて四角い扉を開いて、メグミが船に乗るのをエスコートする。
タイトなスカートをはいていたが、とても乗り込みやすそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます