第13話、ボーンスター

 スーパーハリケーン一過、晴天である。


 ”文福茶釜”は二本のマストに、帆を一杯に張って快走中だ。

 帆の調節は、”気象部”が収集したデータなどを使って半自動で行われる。

 風が強い時では、スクリュー推進より、船足が出るときもあった。

 風が十分吹いていないときは、”半帆、半暗車スクリュー”航行を行う。


 「きれいだね~」

 青い空を背景に白い帆のコントラストが美しい。

 フライトジャケットから煙草とオイルライターを出した。

 煙草の箱には、”ボーンスター”と書かれていた。


 ピン、ヴォッ


 煙草に火を点けた。


「ふーーー」

 白い煙と共に、精神を安定させる香りが周りに漂う。



 特定保健用嗜好品、合成煙草、”ボーンスター”


 限られた土地の中で、植物の煙草を育てることは無理である。

 そのため主原料は、”魚の骨”で作られている。

 本物の煙草に比べて、味、香りともにかなり再現されているらしい。

 常習性は当然なく吸い続けると骨が強くなる。

 フレーバーとして、ビタミンCを含んでいるものもあり政府は船乗りに、”喫煙”を推奨している。



「ん。 となりいいかな」

 トウジョウ艦長が近づいてくる。


「どうぞ」


 懐から、くちゃくちゃになった”ゴールデンフィッシュ”と書かれた煙草を出した。

 大きく黒く塗りつぶされた魚の絵が描かれている。

 マッチ箱を取り出し一度振って、カラリと音をさせてから取り出して火を点ける。


 トウジョウは、甲板端の手すりにもたれながら煙を吐いた。


「ヒイラギ准尉のこと、ありがとね」

「パイロットは、もう一人いたんだけど飛行時間がそんなに変わらなくてね」


 メグミの表情が微妙に曇った。


「ああ。 いや、もう一人は今結婚して新婚旅行に行ってるよ」


 他、色々話していると


「艦長っ」

 カオリ大尉の声が聞こえてきた。


「おっと。 サボってるのがばれちゃう」


 天気が良ければ明日、離艦することを伝えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る