第12話、 ”百目鬼《トドメキ》システム” 


 艦の回転が収まった。


 しばらくすると、


「スーパーハリケーンは通り過ぎた」

「これより、浮上する」

 艦内放送が流れた。


 上がっていく浮遊感と共に、部屋の丸い二重窓の外を海水が、上から下へ動いていく。

 海面が見え、次に青空が見えた。


「凄かった~」

 ベルトを外し、ベットに力なく座る。


 その時、「ガコン」と言う音と共に、丸いハンドルが周り、扉のロックが外れた。

 鉄の扉を開いて、カオリ大尉が入ってくる。

 開いた扉の向こうから「忍法、壁走りっ」という男性乗組員の声が聞こえる。

 一瞬、その声に「ピクリ」とカオリ大尉が反応したが、そのまま入ってきた。


「大丈夫でしたか?」

 水差しとコップの乗ったお盆を、サイドテーブルに置いた。


「何とか、大丈夫でした」


「お水は」


「いただきます」


「流石、飛行艇乗りですね」

 コップに水を入れて渡してくれる。


 飲み終えた後、


「よく頑張りました」

 頭を撫でてくれた。


「!?」

(陸軍の伝統なの?)

 着やせするとはいえ、目の前にあるカオリの胸部装甲の偉大さを、改めて実感するメグミである。


 しばらく撫でてくれた後


「気分が悪くなったら、すぐに言いなさい」

 カオリは部屋から出て行った。


 部屋の外から


「今、忍法と言ったのは誰ですかっ」

 と聞こえてきた。


「そういえば」

 荷物からメインモニター(タブレットPC)を取り出し、電源をつけた。

 海軍の旗章が浮かび上がり、起動する。 


 ”百目鬼トドメキネット”を開く。


 黒い背景に、大小の”目”が開く画面が出て起動した。



 ”百目鬼トドメキネット”


 ”ジタクケビイーン”と呼ばれる、謎のパソコンプロ集団が、”科学論文投稿サイト”に論文を投稿して、有名になったインターネットシステムである。

 始まりは、近くのPCや携帯の位置情報を共有して、緊急時にすぐ救援が来るように、目的だったそうだ。(沢山の目で)

 そのシステムは画期的で、後に政府と軍に制式採用され、インターネットソフトの主流になった。

 その集団は、複数人であるということ。

 後書きに 必ず当時流行っていた女の子向けアニメ


「クジラに乗った魔法少女、シロたんっ」


 を絶賛するコメントが書かれていること以外、ほぼ何も分かっていない。

 このアニメを快適に見るためにシステムを完成させたと、ネット上ではまことしやかにささやかれている。


 ちなみに、メグミも士官学校時代に、この”科学論文投稿サイト”に論文を投稿して認められ”博士号”を取っていた。

 さらに、一般の人に、沢山のまで果たしている。

 


「あった。これだ」


 陸軍のニュースサイトの端の方に、


”月間、最も撫で撫でされたい女性士官ランキング” 


 最初見つけたとき何のことかわからなかった。


「こういうことか~」

 ちなみに、カオリ大尉は第8位だった。


「厳しくないっ!?」

 上位7名の、”撫で撫で”がどんなものか想像できないメグミである。



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