第11話、ひっくりかえっちゃった

「もう少しで。スーパーハリケーンが来るぞ」

「避難潜水、用意」

「全隔壁、閉鎖」

「前部、後部マスト収納」

 マストが後ろに倒れ、器具で固定される。


「|前後のアンカー下ろせ」

「沈めるぞ。もう一度、隔壁閉鎖を確認」

「タンクに注水」

「潜水せよ」


 ”文福茶釜”はその場でゆっくりと、海の中へ沈んで行った。 



 メグミは、カオリ大尉と自分の部屋にいた。


「戦艦での、避難潜水は初めて?」


「はい」


「トイレは済ませた?」


「はい」

 メグミはベットに横たわった。

 脇とお腹と太ももを、太いベルトで固定される。


「艦は、水の中で基本動かないわ」

「でも横には回るの」


「き、聞いたことがあります」 


 心配そうな顔で、そっと嘔吐袋を渡される。


「吐くときは、窒息に気を付けてね」

「大体20分くらいだから、頑張って」


「・・・はい」



「うひゃあああああ」

 グリンと言う感じで、艦が、艦首、艦尾を軸に180度、横転する。

 上下逆になっていた。

 ベルトが外れると部屋の天井に落ちる。


「ひいいいいいいい」

 元に戻った。


「もういっかいいい」

 上下逆になった。

 強者は、この状態で本を読むという。


 毎回必ず、わざとベルトをせずに、壁や天井を、艦の回転に合わせて走る者が出るそうだ。

 後で、ヒイラギ准尉が教えてくれた。


 何度か、くるくる回った後


「な、何とか耐えた・・・」

 吐かずに済んだようである。

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