第5話、文福茶釜
「帆をたため」
自動でマストに張られた帆が折りたたまれる。
「スクリュー推進に変更」
「両舷全速前進」
「こちら、”文福茶釜”。主砲で大型の誘導弾を撃ち込みたい」
「測距の協力をお願いする」
「こちら、”水無月”了解しました」
◆
日本陸軍所属、帆柱搭載型弩級戦艦、”
まだ、”海水酸素水素分離式エンジン”が発明されて無い時代に、消費燃料を可能な限り減らすため、弩級戦艦にマストを着けて帆船化したものである。
マストは、スーパーハリケーンの時には、後ろに倒される。
似たような機構が、飛空艇”水無月”にも採用されている。
マストは前後に二本。
主砲は、艦の前後に30センチ2連装砲を2基、4門。
魚雷発射管4門。
艦の中央左右格納庫に、飛空艇を縦に2機、搭載可能。
陸地が減った陸軍に回せる予算は少なく、年代物のロートル艦と言わざるをえない。
しかし、シタデル構造(艦の中央に大事なものを集めて分厚い装甲で守る)は大変丈夫で、十分活躍している。
ちなみに、”文福茶釜”とは、2世紀ほど前に考えられていた想像上の偉大な”守護霊獣”の名前、と言われているが正確な情報は喪失している。
(とても強くて素晴らしいものだったに違いない)
◆
メグミは、”水無月”を垂直離着水モードにして、タイタンホエールの上空にホバリングさせる。
足元まで斜めに入った、ガラス越しにタイタンホエールを確認する。
「シロナガス型だな~」
その時、
「うひゃああ」
真横に、音響機雷の水柱が上がり、パラパラと空いているキャノピーから海水が入ってきた。
操縦桿についているセレクターを親指で、”安全”から”赤光”に変えた。
これで、測距用の赤いレーザー光が照射されるはずだ。
”文福茶釜”がサーチライトで自分の位置を知らしてくる。
光学式の照準器を”文福茶釜”に合わせた。
両手両足で機体を安定させながら、
「測距用のレーザーを照射する」
「3・2・1・ナウ」
トリガーを引いた。
「もう一度、3・2・1・ナウ」
「ありがとう。測距は完了した」
観測士が、計算尺を片手に答えた。(電卓も液晶)
「主砲弾が撃ち込まれる。周辺から退避を」
「了解」
素早く通常飛行モードにして、”文福茶釜”の方に艇を飛ばした。
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