第3話、エイプリルフール
「ドーーーーン」
大きな音に、飛行艇の翼の上のテントで寝ていたメグミは、飛び起きた。
「な、なに。なになに」
テントから飛び出した。
遠くの方の海に水柱が上がっている。
「防御用の音響機雷に何か掛かってる」
大慌てでテントをたたみ、コックピットに飛び込み、体内のアルコールを無効化する錠剤を口に放り込んだ。
水なしで(に、苦い)かじりながら双眼鏡で見た。
横に並んだ機雷が、同時に爆発し二つの水柱を上げた。
「でかい」
空を仰ぎ見る。
月の明かりをキラキラと反射させるもやの様なものが見えた。
◆
ナノマシンで出来た悪戯用玩具、”エイプリルフール《四月バカ》”。
百年前の”第三次世界大戦”を終わらせ、人類も滅ぼしかけた最悪の玩具。
元々は、ある国の地方の工科大学生がお遊びで作ったという、”パーティーグッズ”である。
やっていることは、
パソコンのモニターや携帯端末の液晶ディスプレイの表示される数字を、ランダムで1から5の範囲で書き変える。
大戦末期、とある小国が苦しまぎれの攪乱用に、ナノマシンの、増殖値”無制限”、活動時間”無制限”でばらまいた。
小国のつけは自国の、原子力発電所の大爆発で払うこととなる。
原子力発電所の管理用モニターに、うその情報が流され続けたのだ。
さらに悪いことに、この大爆発で、放射能と共に”エイプリルフール”も全世界に拡散した。
全世界は、全ての原子力発電所の停止による、深刻な電力不足になった。
また、航空機のモニターに与えた影響は深刻だ。
例えば、着陸直前の航空機の高度が、5メートル高く表示される。
多い日で一日に、約千機の飛行機が着陸に失敗して墜落した。
さらに海水面の上昇の元となる”大異変”の間接的な原因にもなった。
◆
「ううっ。やだなあ」
PCやGPSの助けなしで、夜の海上を、飛ばなくてはならない。
飛行艇”水無月”の計器類は基本的に機械式である。
エンジン始動と同時に、正面のモニターの電源を落とす。
正方形に切られグリップで止められた地図を片手に
「女は度胸っ!」
メグミは、キャノピーは開けたままフロート前部にある補助ジェットを吹かし、ほぼ垂直離水状態で”水無月”を発進させた。
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