第7話 完全決着
虫の息となったアルを満足げに見つめながら、ヴェラははっと思い出す。
「あの
周囲を見渡すがどこにもいない。「まさか、逃げおったか? いや、わざわざアルを助けに来たのにアルを置いて逃げるはずはない」
その様子を上空から見つめる二人。
「さ、いくわよ!」
デリルが言うとエリザもふぅと息を
「来いっ、デリル!!」
エリザは自由落下しながら
「それっ!」
デリルは戦斧に
「いくぞっ! ヴェラァァァァッ!!」
上空から声が聞こえてヴェラは見上げる。徐々に近づいてくるエリザ。
「ぬうぅ、いつの間に……」
ヴェラは落ちてくるエリザに向かって炎を吐いた。
「気が付きましたか、アルさん?!」
ヴェラがエリザに気を取られている隙にアルの手当てをするネロ。
「ネロくん? 君が助けてくれたのか?」
アルはむくりと起き上がってネロを見る。
「まだです! まだ終ってませんよ! さあ、立ち上がって!!」
ネロはそう言ってアルを立たせる。今まさにエリザが上空からヴェラに攻撃をしているところである。アルは竜殺しの剣を握り締めてヴェラに向かって行った。
「へへっ、そう来るんじゃねぇかと思ってたぜ!!」
エリザは不知火のマントで顔を隠す。あらかじめデリルから渡されていた不知火のマントでヴェラの炎をかわしながらどんどんヴェラに近づくエリザ。
「なにぃ! なぜお前がそれを持っておる!?」
ヴェラは思惑が外れて悔しそうにエリザを
「いくぞっ! きりもみサンダースラッシュ!!」
落下の勢いでそのままヴェラに切りつけるエリザ。その斧にはデリルの落とした雷が帯電している。エリザの戦斧はヴェラの頭部にヒットし、エリザはそのままヴェラに体当たりを食らわせる。
さすがの
全身に電流が走り、一時的に身体が痺れて動けなくなるヴェラ。
「ヴェラ、今度こそ覚悟っ!!」
アルは無防備になったヴェラの
ギィィィヤァァァアァァァッ!!
耳を
「さすがにコレはやったわね……」
デリルがふらふらしながら地上に降り立つ。そして、そのままその場にへたり込んだ。エリザも無事ではいられない。いくら巨大な臥竜がクッション代わりになったとはいえ、デリルの雷によるダメージ、地上に落下したダメージがエリザの全身に駆け巡る。エリザはそのまま仰向けに倒れてピクリとも動かなくなった。
「ヴェラ、ごめんよ……。こうするしかなかったんだ……」
竜の血を浴びて凶暴になっていたアルだったが、絶命寸前のヴェラを見ていつものアルに戻っていた。徐々に動きが鈍くなり、その場に倒れるヴェラ。ビクンビクンと時々痙攣を起こしながら、ぐったりと動かなくなっていった。
カッ!!
ふいにヴェラの身体が強烈な光に包まれる。思わず目を
「ヴェラ!!」
アルは人間化したままピクリとも動かないヴェラに駆け寄る。意識は無いが、かろうじて生きているようである。ヴェラは逆鱗を突かれ、竜の姿を保てなくなってしまったのだ。よく見ると喉元から血が流れている。「ヴェラ……」
アルがヴェラの姿を黙って見つめていると、目から火が出るほどの勢いで頭上に
「てめぇ! まずはあたしのところに駆けつけるべきだろうが!!」
ネロの手当てで回復したエリザが、ヴェラに駆け寄ったアルに怒りを
「いてて……。相変わらず乱暴だな、エリザは……」
アルは頭を撫でながらヴェラの
「へへっ、当たり前だろ?」
エリザはちょっと恥ずかしそうに鼻の頭をぽりぽりかいて、アルを抱き返した。
ネロはデリルの手当てをし、肩を貸してアルたちに合流した。抱き合っていたアルたちもパッと離れて何も無かったように
「あの伝説の臥竜を私たちが倒したのね」
デリルは褐色の巨熟女を見下ろして呟く。それぞれが死力を尽くし、強大な存在に打ち勝ったのである。
「で、どうするんだ、そいつ」
エリザが人間化したヴェラを顎で指す。
「「連れて帰ろうよ」」
アルとネロが二人揃って言う。
「お前ら、簡単にいうけど、重そうだぜ、そいつ」
エリザが言うと、ネロがじっとデリルを見る。
「なによ、まさか私に運べっていうんじゃないわよね?」
デリルは再び魔力がすっからかんになっている。とてもじゃないが、こんな巨熟女を運ぶ魔力はない。ネロはデリルに近づき、ぎゅっとデリルを抱きしめた。
「おっ? なんだ、ネロ。発情したのか?」
エリザが冷やかす。しかし、ネロは真剣な表情でデリルの
「魔力注入!!」
ネロがデリルに魔力を送り込む。再びデリルの魔力はフルチャージされた。
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