第5話 魔道具の正体
遺跡の調査を終え、デリルとネロは博士と共にヴァイオレットたちの待つ仮設の村に戻ってきた。
「そういえば、魔道具の話ですが……」
ネロは博士に尋ねる。「何か言いたそうにしてましたよね?」
「そうそう、臥竜を倒すのに必要な魔道具じゃったな」
博士は思い出したように言う。「それならおそらく
「「不知火のマント?」」
デリルとネロが口を揃えて言う。
「そうじゃ、臥竜のブレス攻撃から身を守るにはあれが必要じゃ」
「そう。これでようやくはっきりしたわね」
これまで雲を掴むような話だった伝説のエルフの魔道具、それが不知火のマントらしいというところまで分かったのだ。かなりの進捗である。
「それじゃ、早速探しに行きましょう」
ネロは妖精探知機を取り出して次のエルフの集団を探そうとした。
「ん? おぬしら何をしておるのじゃ?」
博士が不思議そうにネロたちに
「ごめんなさい、わたしたちには時間が無いのよ」
デリルはすぐにでも飛んで行きたいと思いながら博士に言う。「何しろアルくんが臥竜に捕まってるんだもの。急がなきゃ」
「この道具があればエルフの居場所が分かるんです。これで探します」
ネロが画面を操作しながら博士に説明する。
「後はその不知火のマントのありかを知っているエルフを見つけるだけね」
とは言ったものの依然として雲を掴むような話である。結局、道具の名前が分かったにすぎないのだ。
「不知火のマントのある場所なら分かるぞい」
「「へ?」」
思わずデリルとネロが素っ頓狂な声を出す。
「何しろ有名な魔道具じゃからな」
「そうなの? で、どこにあるのよ?」
「
博士は二人に言う。聖都というのはエルフの主要都市、人間世界で言うところの王都のような場所である。
「じゃあ早速、行ってみましょう」
ネロが言うとデリルはこくんと頷く。いつの間にか取り出した
「おぬしら、聖都の位置は分かるのか?」
それっ、と飛び立とうとしたデリルがぴたりと動きを止める。「そんなに慌てるでない。不知火のマントは逃げたりせんよ」
どうやらすぐにでもアルを助けたいという思いが暴走し始めていたようである。
「ごめんなさい。ちょっと焦り過ぎたわ」
ようやく冷静さを取り戻したデリルは箒から降りて博士の仮住まいで話を聞く事にした。博士の居住スペースは仮住まいとは思えないほどの膨大な書物が山積みにされていた。大きな机やベッドもあったが、これらを持ってあちこち移動しているのだろうか?
「腕の良い大工がおってな。その
デリルの疑問を察知したのか博士が説明する。「このテーブルと椅子もそいつの作品じゃ。まぁそこに座りなさい」
博士は部屋の中央に置いてあるテーブルと椅子を示して二人に言った。テーブルの上は
「急いでおるようじゃから
博士はそう前置きをして話し始めた。「聖都に住むのはエルフばかりじゃ。おぬしらの王都と違い、他民族との交流はしておらん」
王都には沢山の種族が盛んに出入りしている。人間のルールに従うのであれば、たとえ魔物であっても受け入れる柔軟性を持っている。それによって王都は発展し、栄えてきたのである。しかし、エルフたちは選民意識が非常に高く、行商すらも聖都に入れる事を拒んでいた。
「じゃあ聖都に行っても入れてもらえないって事?」
デリルは困ったように博士に聞いた。
「うーむ。そのままではその可能性は高いな」
博士はデリルを舐め回すように見る。「どう見てもエルフには見えん。そっちの小僧はなんとか誤魔化せるかもしれんが……」
「まぁネロくんはかわいいからね。耳さえ隠せば何とかなるかも」
そう言いながらデリルははっと気付く。「どう見てもエルフに見えないって、私が醜いって言いたいの?!」
ばちばちと右手を帯電させて博士に凄むデリル。
「せ、先生、落ち着いて。博士はそんな事言ってませんよ」
ネロがデリルをなだめる。
「わしは聖都にあるアカデミーの教授じゃが、もう二十年以上世界中の遺跡を巡っておる。今の聖都がどうなのかは分からんが……」
博士は困ったような顔でデリルを見る。「おそらく歓迎はされまい」
「困ったわね。せっかく魔道具の在処が分かったって言うのに……」
デリルはふぅと大きなため息を吐く。
「一応、聖都の場所は教えるが、あまり期待せんことじゃ」
そう言って博士は遺跡で発掘したと思われる小物たちをテーブルの上から払い落とし、一枚の地図を広げた。床の上にバラバラと小物たちが散らばる。
「あの、博士。発掘した大事な物なのでは?」
ネロが地図を眺めている博士に言うが、博士は全く意に介さず、
「ここが今わしらがおる森じゃ」
と言って地図の中の一点を指差した。「そして、聖都はこの位置にある」
博士は指を地図上で
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