第4話 謎の祭壇
博士はデリルに問われて困ったような顔をした。
「魔道具と一口に言っても星の数ほどあるぞい」
博士はそう言って瓦礫と化した守護者の向こう側を指差す。「あの祭壇にあるのもその一つじゃろう。どんな効果があるかは調べてみんと分からんが……」
デリルたちは博士の指差す方を見た。祭壇に飾られた何かがキラキラと光を放っている。あれを守るために守護者がいたようである。
「困ったわね、まさかそんなに沢山あるなんて……」
デリルはネロと目を合わせてため息を吐く。
「博士、僕たちは臥竜を倒す為に魔道具を探しているんです」
ネロがそう言うと、博士は何かを思いついたような顔をした。
「おお、それならきっとあれじゃな。ええっと……」
博士が思い出そうと天を仰いでうーんと
ガラガラガラッ!!
突然、瓦礫が崩れて中から真っ黒な何かが現われた。
「な、何なの?!」
デリルとネロが驚いて振り返る。真っ黒な金属で出来た人形のような物が、何かを探しているかの様にキョロキョロと頭を振っている。
「あれ、もしかしたら、守護者の本体では?」
ネロが人形の様子を見ながらデリルに言う。岩で出来た守護者ではなく、金属で出来た守護者を長い年月で岩が覆っていただけのようである。
キョロキョロ見回していた守護者がデリルたちを補足する。
「たーげっとハッケン! ハイジョシマス」
金属製の人形が突然、デリルたちに向かって迫ってくる。
「うわっ、は、速いじゃない!!」
先ほどまで岩に覆われて満足に動けなかった守護者だったが、邪魔な岩が身体から剥がれてスムーズに稼動するようになったようだ。
「オウジョウセイヤ!!」
機械音のくせにやけに古臭い言い回しで守護者が拳を振り下ろす。すんでのところでデリルがネロと博士を掴んでその場から飛び去り避難する。
守護者が猪突猛進にデリルたちに向かって走ってくる。
「金属で出来てるみたいね、じゃあドロドロに溶かしちゃえ!」
デリルは灼熱の炎を巻き起こして守護者を攻撃する。しかし、守護者は溶けるどころかデリルの魔法を吸い込んでいく。
「駄目じゃ! こやつは魔法を吸収しておるぞ」
博士が守護者の様子を見てデリルを止める。「魔法で攻撃すればするほど吸収してエネルギーに変えてしまう魔力吸収型じゃ!」
「なんですって? それじゃ、お手上げじゃないの!」
デリルから魔法を取り上げたらただのデ…いや豊満熟女である。
「おそらく胸部にあるコアの部分に魔力を蓄えるのじゃろう。コアを物理的に破壊すれば機能停止するはずじゃ!」
博士は守護者を指差す。胸の中心部に小さな丸い穴が空いており、その中からうっすらと青い光が漏れてきている。胸の装甲は厚く、打撃を与えても体内のコアには影響は無さそうである。完全に塞がっていないのは熱を逃がすためか、魔力を吸収するためであろう。
どちらにしても、動いている守護者のコアを破壊するのは至難の
「先生、僕に任せて下さい!」
ネロはデリルと博士の前に立ちはだかり、ヴァイオレットに渡された弓矢で守護者に狙いを定める。
「ネ、ネロくん、大丈夫なの?」
デリルは心配そうにネロを見つめる。迫り来る守護者とネロの距離はあっと言う間に縮まっていく。
ヒュッ!
ネロの弓から矢が放たれる。矢は一直線に守護者の胸に向かって飛んでいく。
カッ!
ネロの放った矢が守護者の胸部に突き刺さると、守護者はその場に膝から崩れ落ちた。赤く光っていた目の部分が光を失う。
「いやぁ、的が大きかったんで上手くいきました」
ネロはデリルの方を振り向いて笑顔で言った。
「あ、あっさりと……」
博士はあまりに簡単にやってのけたネロを呆れたように見つめた。まさに針に糸を通すような正確無比な一撃である。「見事な腕前じゃな」
「凄いわ、ネロくん! やっぱりあなたは弓矢の天才ね!!」
デリルは興奮気味にそう言ってネロを抱きしめた。
「そんな、大げさですよ」
ネロは爆乳に埋もれながら謙遜する。直径三センチくらいの大きな穴である。ちゃんと狙えば誰でも貫通できるはずだ。ネロは本気でそう思っていた。
いちゃつく二人を尻目に博士は祭壇に近づいていた。光を放っていた物体を迂闊に触らずじっくりと観察する。古い遺跡の中でおそらく数百年以上経過しているはずなのに光を放っているというのは不自然である。
「どうやら私たちの魔力に反応して光ってるみたいね」
いつの間にか後ろに居たデリルが急に喋り出したので驚いて振り返る博士。
「呪いとか罠は無さそうです。持って帰っても大丈夫そうですよ」
ネロは補助魔法によって祭壇に危険が無い事を確認して博士に伝える。意を決して博士が物体に手を伸ばす。触れるか触れないかというところで、
「わっ!!」
デリルが突然大きな声を出した。ビクッとして手を引っ込める博士。
「ガキみたいな事をするんじゃない!」
大爆笑しているデリルとネロを怒鳴りつける博士。再び物体に手を伸ばす。指で摘めるくらいの大きさの多面体である。クリスタルのようなガラスのような透明な材質で出来ている。これが何なのか、今のところは全く分からない。博士は謎の物体を布に包んで鞄の中に収めた。
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