第15話 会談

 騎士エクサウルに連れられ、俺とシアと四人の天使は王のいる部屋に案内された。

 部屋には王の他にも何人か人がいた。

文官らしき人物が六人に、騎士が八人。これだけいると息苦しい感じがするな。


 俺は玉座に座っている王の前まで行き、立ち止まる。

 普通ならここでひざまづくべきなんだろうが、俺はそれをしなかった。この国の一員でない俺に上下関係はないと考えたからだ。敬語は使うし礼儀も払うけど、上下はない。


 あくまで対等というスタンスで臨む。


「お会いできて光栄ですダイル殿。わしがガルマニア王国国王、バハラド・フォン・ガルマニウスじゃ」

「こちらこそお会いできて光栄です陛下。私がダイル。現在はジマリ村に住まわせていただいている……まあ居候のようなものです」


 俺にまだ肩書のようなものはない。これで間違ってない……はずだ。

 それにしても国王と言うからどんな恐ろしい人なのかと思ったけど、なんか普通のおじいさんって感じだ。苦労しているのか顔の皺は深いけど、覇気はない。

 一国の王にしては頼りないって感じだ。


「ダイル殿のお噂は色々と聞き及んでます。その是非を知るためにも、まずはダイル殿がなぜこの大陸に来たのか、そして今後何を成していくつもりなのかお聞きしてもよいですかな?」

「ええ、もちろんです。少し長くはなってしまいますが……」


 俺は聞かれたことを丁寧に話した。

 もちろん七剣騎士の英雄譚セブンナイツ・オンラインのことまでは説明してない。シアに言ったように他の大陸から流れ着いたのだと話した。

 ここで隠すのは危険だと思い、白銀城のことも話した。その城を治すのが目的だとも言った。


 全てを聞き終えたガルマニウス王は「……なるほど」と呟く。


「お話は分かりました。にわかには信じがたい話だが、外のお城と天使を見るに真実なのでしょう」

「ご理解いただきありがとうございます」


 やっぱり天使と城を用意して正解だったな。

 話がスムーズに進む。


「これまでの話は理解いたしました。それではこれからの話をしてもよろしいでしょうか?」

「これからの話、ですか」

「ええ。結論から言いますと、我々はあなたと同盟関係を結びたいと思っております」


 いきなり来たな。

 これは願ってもない話だ。王国はこの大陸でもかなり大きな国に入る。それが後ろ盾につけば今後は色々やりやすくなるだろう。


「その同盟とはどのようなものでしょうか?」

「我が国でダイル殿の成そうとしていることを支援させていただく。もしダイル殿が他国で何かを成そうとしている時、色々と便宜をはかることができます。それに一般人では知り得ない情報を渡すこともできます」


 それは確かに魅力的だ。国が後ろに付けば色々と動きやすくなるだろうな。


「そしてその見返りとして、ダイル殿にはそのお力でこの国の問題を解決していただきたい。具体的には飢餓や流行り病、凶悪なモンスターによる被害など。そのようなものを対処していただきたい。具体的な内容は紙にまとめてあります、目を通してくだされ」

「分かりました」


 俺は紙を受け取り、目を通す。

 ……うん、読めない。簡単な文字なら読めるようになったけどこういう書類は無理だ。


「……ふむ。シアも目を通してもらえるか?」

「あ、はい! わかりました!」


 俺はちゃんと読んだふりをして、シアに紙を渡す。

 王国の人間は「なんで子どもに渡してるんだ?」といった顔を向けてくるが、言葉には出さない。これはシアの頭に天使の輪をつけて正解だったな。きっと見た目が幼いだけで長い間生きてるものだと勘違いしてるんだろう。


「……はい、読み終わりました」

「ご苦労。シアはそれを読んでどう思った?」

「おおむね問題ないと思いました。これを草案ベースにもう少し詰めれば問題ないかと思います」

「そうか、私もそう思っていたところだ」


 真っ赤な嘘をつく。

 するとなぜかシアが「そうだったんですね!」と言いたげに目を輝かせる。なんでお前が引っかかるんだ。


「感謝しますダイル殿。それでは同盟条件や内容などを詰めるのは後にして、食事でもどうでしょうか? 腕によりをかけて用意させてもらっています」

「それはありがたい。ぜひお願い致します」


 ……ふう、ひとまず堅苦しい話は終わりか?

 何とか丸く収まりそうだな、と思っていると突然部屋の扉がバン! と開く。


 嫌な予感がしながら振り返ると、そこには中庭で話しかけてきた貴族の姿があった。

 名前は確かドレアとかいったか? いったいなんの用だろうか。

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