第11話 帰還
天空の神殿の飛行能力は高く。俺たちはすぐにジマリ村にたどり着いた。
四人の天使たちはこころよく村に迎え入れられ、天使たちも俺のことを慕う村人たちに悪い感情は抱かなかった。
しかしシアとの出会いだけは一筋縄ではいかず……
「わ、私たちはこのような
シアと出会ったミカエルは大きな声でそう言う。
他の天使たちも口にはしないけど不服そうだ。いかに
「確かにシアは幼い。だがこの大陸に来てから彼女はずっと私のサポートをしてくれた。その能力の高さは私が保証する」
「で、ですが……」
ミカエルはちらとシアを見て、怪訝な表情をする。
うーむ、思ったよりも深刻そうだな。どうしたもんか。
そう悩んでいると、シアが口を開く。
「ダイル様、少しよろしいでしょうか?」
「ん? なんだ?」
「天使様たちはダイル様の命令よりも、ご自身のプライドのほうが大切なようです。今後のためにもそのような者たちは仲間にしないほうがよろしいのではないでしょうか?」
シアのその言葉に、場の空気が凍る。
いや、確かにシアの言うことにも一理あるけど……あまりにいい方があれすぎる。
当然天使たちもその言葉に含まれた悪意に気づいていて、
「人間がなめた口を……貴様など我が剣で一瞬で塵と変えられるのだぞ!」
ミカエルが腰に差した剣をつかみ、そう吠える。
その言葉にはかなり迫力があるが、シアは一歩も引かずそれどころかキッとミカエルを睨み返していた。肝が座りすぎている。
「なめているのはあなたです。ダイル様の言うことを聞かず私情を優先するなんてありえません。命令をいただけるだけで光栄だというのにそれを無視するなんてどういうおつもりですか!」
「ぐ……っ! し、しかしだな……」
なんとミカエルが押され始めた。
村娘に押される天使、見ていてなかなか面白い。
「私はダイル様に『死ね』と命じられればすぐに死ぬ覚悟があります。あなた方にそれがあるでしょうか? ないなら去って下さい。覚悟のない者に振るお仕事なんてありません」
「ぐ、う……」
シアに言い負かされ、ミカエルはうつむき沈黙する。
他の熾天使たちも反論はないみたいだ。どうやらこの勝負シアの勝ちみたいだな。
「さ、喧嘩はこれくらいにしよう。これで
「……かしこまりました」
ミカエルはそう言うと、シアに向き直る。
そしてなんとその硬い頭を下げて謝った。
「申し訳ない、私が悪かった。色々と教えてもらえるとその、助かる」
他の天使たちもシアに頭を下げる。
まさかこんなことになるとは思わなかったのだろう、シアは「え? え?」と困惑する。
「だ、ダイル様……」
そして困ったように俺のことを見てくる。
あそこまで言ってしまった手前、許すのが難しいみたいだな。しょうがない、助け舟を出すとしよう。
「彼らも反省したみたいだ。ここは私の顔を立てると思って許してやってくれないか?」
「わ、わかりました。ダイル様がそこまでおっしゃるのでしたら」
シアは機嫌を取り直し、ミカエルたちに話しかける。
……うん、もう大丈夫そうだな。
後はシアに任せて少し休むとしよう。
「それじゃあ後のことはよろしく頼む。私は家に戻っている」
「かしこまりましたダイル様。ゆっくりお休み下さい」
頭を下げて見送ってくれるシアと天使たちに別れを告げ、俺は家に戻るのだった。
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