第2話 作戦会議
空にそびえ立つ白銀の城、
その城は俺たち白銀騎士団が手に入れる前から、天使の居城だった。
空中を移動できるアジトなんて他にはない。
イベント『白銀城降臨!』は難しかったのだ。
その天使の攻撃をかいくぐり、城の中に入ることすらかなりの難易度を誇った。
そして運良く中に入れたとしても、城の中には高レベルの天使がうようよいる。
耐久力の高い
厄介な奴の名前を上げたらキリがない。
とまあそんな鬼厳しいイベントがあったわけだ。
当然プレイヤーたちはこんなの無理ゲーだクリアさせる気がないと騒ぎ立てた。掲示板は大荒れ、きっと運営に苦情の電話がたくさんいったことだろう。
しかし……俺たちはそのイベントをクリアした。
あの時の俺たちは神がかっていた。作戦全てが噛み合い、幸運に何度も恵まれ、そして過去最高の集中力とチームプレイを発揮できた。
こうして手に入れた拠点『白銀城』から名前を取って、俺たちのギルドは『白銀騎士団』だった。ちなみに変わる前の名前は……恥ずかしくてあまり思い出したくない。
「くくく、わくわくしてきたな」
天空の神殿のことを聞いた俺は、早速作戦を立て始めた。
まずは情報収集だ。天空の神殿がどこを飛んでいるのか、その周回ルートを調べなければいけない。
「天空の神殿であれば、何回か見たことがあります。秋頃になるとこの村の近くを通るのですよ」
まずは村長のガファスに聴き込んだ。
残念ながらこの村に天空の神殿について書かれた本はないので、全部聞き込みでしらべなければいけない。
でもこの何かを追っている作業は嫌いじゃない。
ギルド戦のときもそうだった。勝った時よりも、情報を集めたり、勝つためにあーだこーだ言い合って作戦を立てたりした時が一番楽しかった。
あの頃の仲間もいなくなり、もうあの時の気持を味わうことはできなくなってしまったと思ってたけど……違った。
今もワクワクはここにある。
「ダイル様! 村の人たちの聞き込み、終了しました!」
「わたしもみんなに、聞いた」
集めた情報を精査していると、最近作った俺の家にシアとルナが入ってくる。
二人とも俺の仕事を手伝いたいと言ってきてくれたので、手伝ってもらっている。こういう時はマンパワーが必要だ。非常に助かる。
「ふむふむ、だいぶ情報が集まってきたな」
壁に貼っている地図を見ながら、呟く。
その地図には天空の神殿を目撃した地点と、目撃した時期を記してある。描いてある点と点を繋ぎ合わせると周回ルートが見えてくる。どうやらちゃんと規則通りに動いているみたいだな。
「これだけ情報が集まれば現在飛んでいる場所も推測できますね」
「ああ、ここだ」
俺は地図の一点を指差す。
ジマリ村東方にある山を越えたその先の地点だ。俺の予想と計算が間違っていなければ天空の神殿はこの場所を漂っている。
「どうするのダイルさま。もうそこに行くの?」
ルナが心配そうな顔で尋ねてくる。
ぶっきらぼうな感じの彼女だが、優しい性格をしている。目つきも鋭いから誤解されやすいんだよな。
「ああ、明日には発つつもりだ。このまま放置していると神殿はどんどん村から離れていってしまう。行くなら早い方がいい」
「……そう。気をつけて行ってきて」
「ああ、安心しろ。すぐに帰ってくるとも」
心配するルナの髪をくしゃっとなでる。
するとシアもすすす、と頭を差し出してくるので平等になでる。なでられ癖をつけてしまったかもしれない。まあもう少し大きくなったら嫌がるようになるだろうし今くらいは甘やかしてもバチは当たらないだろう。
「天空の神殿にまだ足を踏み入れた者はいないらしいです。何が起きるか分かりませんので気をつけて下さい」
「もちろんだシア。私は慎重な性格、準備はちゃんと整えてからいくさ」
俺はシアと約束をし、神殿に行く準備をするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます