第12話 やんごとなき事情
「お邪魔する」
「よくぞいらっしゃいました」
家に入ると、一人の獣人が俺を出迎えてくれた。
ルナと同じく白い髪をした獣人だ。年齢は六十くらいだろうか。結構年を召しているように見える。
「わしの名前はトゥングル。どうぞこちらにお座りくだされ」
トゥングルさんに促されるまま、彼の正面に置かれた座布団に腰を下ろす。
「まずはお礼を言わせてくだされ。ありがとうございます、ルナを助けていただいて」
トゥングルさんはそう言って深々と頭を下げる。
捕まった人たちを帰す時、俺も一緒にその村へ送り届けることが多かったが、ルナは「一人で帰れる」と言ってとっとと帰ってしまったからこの村には来ていない。
「ずっとお礼を言わなければと思っていましたが……歳ゆえに足腰も悪く、出向くことができませんでした。申し訳ありませぬ」
「いえ、とんでもない。私は当然のことをしたまでですので構いませんよ」
「おお、ルナの言う通り寛大なお方じゃ。ありがたやありがたや……」
トゥングルさんは手をこすり合わせながら言葉を繰り返す。
さて、だいぶ場も温かくなってきたことだし本題に入るとするか。
「ルナに聞いたのですが、この村は今オークに悩まされてるみたいですね」
「……はい。誇り高き白狼族があのような者たちに悩まされるとは、お恥ずかしい話です」
白狼族、というのは彼ら一族の名前だろう。
確かに耳や尻尾の形は狼に似ている。
「オークは以前から近くに住んでいたのですか?」
「いえ、奴らの住処はこの村から離れた所にありました。しかし雨が降らない時期が続いたせいで食糧に困り、こちらの方に移動してきたみたいです……」
なるほど。食糧に困っていたのはジマリ村周辺だけじゃなかったということか。
しかしそういう理由だとオークたちが元いた場所に戻る望みは薄そうだな。彼らが悩むのも頷ける。
「生息域が被っているだけならいいですが……奴らは我らの村を襲う計画を建てているそうです。奴らはタフな上に数も多い。勝てる見込みは……ありませぬ」
暗い顔でトゥングルは言う。
さっき村を見た感じ、老人と子どもが結構多かった。もしみんなで逃げでもしたら格好の
「オークとは話し合いしたのですか?」
「奴らは言葉こそ話せますがそれ以外はモンスターとなんら代わりありませぬ。我らを獲物としか見てません」
「なるほど。戦うしかない、と」
「はい……」
事情はだいたい把握できたか。
オークは
ならば安心して
「お話しいただきありがとうございます」
「おや、もう行かれてしまうのですか?」
「ええ、早めに手を打ったほうが良さそうですのでね」
俺の言葉にトゥングルさんは首を傾げる。
「どういうことでしょうか?」
「そのオークの対処は私がいたします。安心してお待ち下さい」
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