第9話 凱旋
洞窟で盗賊たちを倒し、捕らえられていた人々を助けた俺はジマリ村へと戻ってきた。
召喚した天使に乗ればすぐ帰れたんだけど、捕まってた人々、特に神父が「そんなの畏れ多い!」と拒否したので歩いて帰る羽目になった。
天使たちは俺からしたらいくらでも召喚できるモンスターでしかないけど、こっちの人からしたら神聖な存在ということだ。
あまりぞんざいに扱わないほうが良さそうだな。
「おかえりなさいませダイル様!」
村に戻ると一番にシアが駆け寄ってくる。
盗賊が村に来たはずだけど、特に疲れている様子も見られない。数がいなかったのだろうか。
「ただいまシア。村を守ってくれたみたいだな、偉いぞ」
「えへへ」
頭をなでるとシアはふにゃりと顔を緩ませる。
こういうところを見るとやっぱり子どもだ。あまりショッキングなことはさせないように気をつけなきゃな。血とか見たら傷ついてしまうだろう。
「あの。村に来た盗賊の中で一番偉そうな人を捕まえておいたのですが、いかがしますか?」
「なに? そんなことができたのか?」
「はい。あの倉庫に縛ってあります」
まさかそこまで完璧に仕事をこなしているとは思わなかった。
「ううむ……とはいえ聞きたいことは他の盗賊から全て聞いてしまったし、今更聞きたいことはないかもしれないな。わざわざ捕まえてくれたのにすまないな」
「いえ、あやまらないで下さい! 私が勝手にやったことですので! ……えと、じゃあどうしますか? 処分しときましょうか?」
「そんな汚いことシアに任せるわけにはいかない。私の方から命令を出しておこう」
控えている
ちなみに俺が
「そうだ。盗賊のアジトから捕まっていた人と盗まれていた物品を持ってきたんだ。申し訳ないがこれらの管理をお願いしていいか?」
「はい! もちろんです! そういう細かいのは大得意なので!」
シアは嬉しそうに返事をする。
最初の方はシアに頼み事をするのに気が引けていたが、最近は我ながら躊躇いがなくなってきたと感じる。今度ちゃんと
「召喚した
「はい! お任せください!」
シアは「うおー!」とやる気満々だ。
俺も彼女の働きに負けないよう、頑張らないとな。
◇ ◇ ◇
盗賊騒ぎから一週間後。
シアと他の村人たちの頑張りの甲斐あって、捕まっていた人たちのほぼ全員がもと住んでいた村に帰ることができた。
帰っていない数人はジマリ村にいついている。なんでも俺のもとから離れたくないらしい。無理やり追い返すのも可哀想なので村に新しい家を建ててあげた。ちなみにいついた中にはあの神父もいて、合うたびに拝まれている。
盗品も少しずつ元の所有者に返している。
一度行った村なら召喚した天使に荷物を持っていってもらえばいいし、そこまで大変ではない。最近では俺のやったことが近隣の村にも伝わり始めているみたいで、わざわざジマリ村まで来て俺に会いに来る人もいる。
あまり目立ちたくはないんだけど、まあそこら辺はシアが上手くやってくれて余計な手間はかからないようにしてくれている。もう完全に俺の秘書って感じだ。
あ、そうだもう一つ変わったことがあったんだ。
他の同年代とあまり話していなかったシアに友達ができたんだ。
その相手は獣人のルナ。俺が洞窟で助け出した内の一人だ。
彼女はジマリ村に近い森の中に他の獣人たちと一緒に住んでいるらしい。ちょくちょく村に来てはシアとなにやら楽しそうに話している。
友人がいるのはいいことだ。俺の分もぜひ友情を育みいい思い出をたくさん作ってほしい。
まあそんな感じでここ最近は慌ただしいけど平和な日々を送っていた。
そろそろ白銀城を直すために何かし始めなくちゃな……と思っていた矢先、村に遊びに来ていたルナに俺はある頼み事をされる。
「ダイル様。実は助けてほしいことがある……です」
慣れない敬語を使いながらルナはそう切り出してきた。
その顔は暗い。深刻なことなのだろうか。
「いったいどうしたんだ?」
「私の村の近くに最近オークが現れる。だけど私の仲間はオークには勝てない、このままだといつかやられてしまう……」
オークは確か豚の頭をした亜人だ。
動きは緩慢だけど、力と体力が高い面倒くさいモンスターだったな。
あまりいいアイテムも落とさないし、積極的に狩るようなモンスターではなかった。
とはいえ住処に近づいてくるなら避けることもできない。これは中々深刻そうな問題だな。
俺は近くにいるシアに質問する。
「シア、何日くらいなら村を空けて大丈夫そうだ」
「三日程度でしたら問題ありません。あ、あとその期間でしたら私も同行できます!」
シアはノータイムでそう返事をしてくる。相変わらず仕事のできる子だ。
「そうか、シアも来れるならちょうどいい。試したいこともあるしルナの村に行くとしよう」
「……え! ダイル様が来てくれるの?」
「ああ、もちろんだとも。友の窮地を救うのは当然のことだ」
そう言ってルナのもふもふ頭をなでる。
するとルナは尻尾をぶんぶんと振って喜ぶ。照れ屋なのであまり言葉や表情に出さないが、こういうところに出ちゃうのがまだまだ子どもだな。
……なんかシアの方から怖い視線を感じるが、気のせいだと思っておこう。
「ところでダイル様、試したいこととはなんでしょうか?」
なでるのをやめると、シアが不思議そうに尋ねてくる。
そういえば彼女にはまだこのことを話していなかったな。
「私が召喚する天使がいるとはいえ、まだまだ戦力には不足がある。私はそう考えている」
「……なるほど。私は現状でも問題はないと考えていますが、ダイル様がそうおっしゃるなら間違いないのでしょう」
確かにシアの言う通り、一般的な目線で見たらこの村の戦力は問題ないだろう。
毎日色々召喚しているので、村では普通に天使を見かけるようになった。大きな国と戦ってもそう簡単に負けないような戦力がここにはある。
でももし、
俺と召喚した天使だけで勝てるかは怪しい。もし勝てたとしてもシアやルナといったこっちの人を守れる自信はない。
「私は考えた。どうすればこの村の人たちを守れるかと。そして一つの結論にたどり着いた」
その言葉を聞いたシアとルナがごくりとつばを飲む。
二人共気になるって感じだな。俺はたっぷりもったいぶったあと、その言葉を口にする。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます