第39話



 江島は渚で暫く海を見ていたが、カプロ海軍基地に戻ると、自分の部屋に戻りウィスキーを持ち出して基地の港に座った。

既に港には日本からやって来た巡航型潜水艦3隻は存在しない。


 基地に在住するウルグアイ兵も殆どいない。

それぞれが、それぞれの家族のもとへ帰った。

そこにいるのは日本から逃れてきた軍関係者くらいである。


 どの部屋も扉は閉ざされている。

まるで放射能を遮ることができるかのように窓も固く閉ざされている。


 既にこの国も放射能汚染濃度10%を越えている。


 江島は遠い水平線から目を離すと、空を見上げる。


「宇宙から見た地球は何色なのだろう? 放射能に汚染されていても青い色なのだろうか?」


 港で一人、空を見上げていたが、水平線と混じり合う空を眺めながら、また一口、ウイスキーを飲むと、


「安心とは覚悟、覚悟とは受け入れることだ」


 そう呟いて軽く笑うと、兵舎に戻った。

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