第34話



 巡航型潜水艦から厳重に蓋を閉めた小さなポットを持って一人の男が出て来る。

男はウルグアイ軍から借りた電動車で海軍病院へ向かった。

海軍病院に着くと真っ直ぐに糸川の部屋に向かった。


 廊下を歩いていると糸川が前から現れた。

驚いたような顔をする糸川に声を掛ける。


「艦長」


「やぁ、これはこれは石田軍医殿ではありませんか」


「お久しぶりですね、艦を出てから会っていないように思います」


「そうですね、私もそう思いますよ。立ち話なんかより、病室に入りませんか」


「お子様は?」


「元気なものですよ、先程までキャッチボールをしていて、私は休憩がてらトイレに行って戻る途中です」


「御子息が目をお覚ましでおられるのなら申し訳ありませんが、この上の階にあるラウンジへ行きませんか」


 糸川は不思議そうな顔をするが、


「よろしいですよ、でも、ラウンジというスペースがあるだけで、何も売ってませんよ」


「ええ、結構です。お渡ししたい物があるんです」


 はて? と思う糸川だが、


「分かりました、行きましょう」


 と答える。

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