第18話
ブラジルとアルゼンチンに囲まれた国ウルグアイ。
首都はモンテビデオである。
そして放射能汚染濃度0、つまり放射能濃度5%以下のこの国も、放射能汚染濃度90%を越えた国々と同じように、いつかは滅びようとしている。
また、滅びた国々など被害状況を報道していたラジオやテレビ局も減り、原子力発電の供給で充分な電力を抱えたこの国は、人々が滅んでも電力だけが残るような勢いで街は以前と変わらないかのように賑やかであった。但し、放送局で働いていた人々の中には、さっさと放送局を去り悠々自適な生活を送ろうと田舎へ移り住み、静かに人生の終焉を見送ろうとする者も多かった。
メラニーもそうであった。
幼い頃から綺麗な声をしていて、声変わりがしてもその美しさは変わらず更に艶が出て、彼女のファンは少なからずの数があった。
そんなファン達に支えられてやってきた彼女ではあったが、結婚もせず30を越えた今、死が近づいてきている世界で、このままで良いのか?と思った。
既に放送局で働いている人達も少しづつ去って行き、自分はどうしたいのか?と思うようになった。
正義感なのか責任感なのか、この世界の状況を最後まで電波に乗せて伝えるべきだと思える人達だけが局に残っている状態であった。
そして行く当てのない人も。
そんな時に思い出したのが農園で一人暮らしをしている父のことであった。
有難いことに電話は未だ繋がっている状況だ。
この状況が続いている間にと思い、彼女は父に連絡を取ると、彼女の父親は明るい声で、最後まで農園で働いて国と共にこの世を去る考えだと言った。
彼女は電動車を飛ばして、父の住んでいる田園へと向かった。
元気そうに娘を迎える父親は、明るい笑顔で、おかえり、と言った。
彼女は父親に、放送局を辞め、ここで暮らして行くつもりだ、ということを話した。
父親に恋人のことも聞かれたが、3年も前に別れていることや、今の生活のことなども少しづつ話していった。
放射能の届いていないこの農園には、食糧も豊富にある。
彼女が好きだった乗馬用の馬もちゃんと生きていてくれていた。
彼女が幼少の時の馬は既にいないが、父は新しい馬を育ててくれていた。
「いつ帰ってくるか分からない私のために?」
メラニーは、ここで最後を迎えよう、そう思った。
そして、そんなことを思ったのは彼女だけではない。
彼女は後から知ったのだが、父の友人の紹介でもう一人、この家の離れにある小屋を借りたいという人がいるということだ。
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