第16話



 糸川がコーヒーを飲み干すと、ガルデスがお代わりは如何?と身振りで尋ねてきた。


「いやー、流石にこの話の後ではね、スコッチでも貰いたいものですよ」


「いいですよ、でも、お勧めはしたくないですね」


「どういう事ですか」


「最初にスコッチでもとお誘いしましたが、やはりお勧めするのはやめておきましょう。2件目というのは、他でもない貴方の身内の話なのですよ」


「もしかして、息子が、どうかしました?」


「はい、そうです。アルゼンチンの貴方のお友達、フェルナンデス少佐から連絡がありましてね。息子さんの状態が良くないとのことでした。そこで私はモンテビデオにある海軍病院に転院をお勧めしたのですよ」


「それは有難い」


「航海の間はお伝えしたくなかったのですが、今は無事に上陸されている。すぐにでも会いに行かれることも可能ですが? 行かれますか?」


「勿論です」


「では軍の車をお使いください。こちらも治安が悪くなって来ましてね、軍の車なら少しは安心でしょう」


「貸していただけますか」


「一階の事務室へ、車の件は私から連絡をしておきますよ。運転手は必要ですか?」


「いや結構、自分で運転して行きますよ。あ、そうそう、私の鞄を用意していただいた部屋に運びたいのですが。案内をしていただけますか?」


「ええ、部下に案内させますよ。ちょっと待ていてください、直ぐに呼びますので」


「重ね重ね感謝いたします」

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