第12話
「大陸がはっきりと見えてきましたよ。レーダー上ですがね。南米大陸に間違いないでしょう」
航海長の池波が言う。
答えて糸川が、
「そうか、じゃ潜望鏡深度まで船を浮上させてくれないかい」
「海上には出ませんか?」
「そうだね、港が見えてからにしましょう。潜水艦だからね、潜水航行の方が効率がいい」
「了解、港が確認できるまで潜望鏡深度で航行」
潜水艦が浮上を始める。
潜望鏡深度まで浮上すると艦は、そのままの速度で前進し続ける。
潜水艦が波の下を潜航する。
辺りは深海のように暗い。
太陽が沈み星明かりしか見えない海は、不思議な世界のように神秘さを与える。
朝日が登り始める頃、
「艦長、そろそろ目視できると思いますよ」
池波航海長がそう言うと、糸川が前方を確かめる。
「見えるよ、陸地だ」
「やっとここまで来れましたね」
と糸川の嬉しそうな声に池波が応える。
「ああ、潜水に慣れていない乗組員も居るし、何よりも波の下というより放射能の下を潜り抜けて来たようなものだからね」
くらまと他、いつしろ、こうじんの2隻の潜水艦が何時間も掛けて潜望鏡深度で潜航していくと、潜望鏡を覗いていた糸川が、
「見えたぞ、見えた。カプロだよ、港が見えるよ。海の上に出よう、浮上だ」
それに応えて池波航海長が大きな声で言う。
「了解、全艦浮上」
それに答えて池波通信士が復唱する、
「全艦に告ぐ、浮上」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます