第7話



 3人の船員はラウンジに場所を変えて、コーヒーからウイスキーに代わっている。


「艦長、ほどほどにしてくださいよ」


 と機関長が笑いながら声をかける。


「大丈夫さ」


 と答えながら糸川はプラスチックの透明なグラスを片手で上げて、機関長から副長に目を移す。


「そんなことを言って、葛木機関長を困らせないであげてください」


 江島もにこやかに笑いながら艦長を諭す。


「本当に大丈夫だよ副長、今から艦長代理を命じるよ。それが理由さ」


「それだったら艦長は何もすることがなくなるじゃないですか」


 葛木が干し葡萄をひと摘みして口に放り込み、グラスを傾けながら言う。


 そこへ船員が一人やって来て3人に声を掛ける。

1等海士で通信士の矢作やはぎである。


「乗組員の艦への交代も終わりました。そろそろデッキに出る順番です。用意をお願いします」


「そうか、外へ出た乗組員の様子はどうだい?」


「ええ、デッキを走り回る者、大の字になって寝転んだまま動かない者、色々です」


「そうか、少しでも気晴らしになってくれたなら良いのだけどね。さあ、お二人様、酔っ払って船から落ちないように、酒は切り上げようじゃないか」


 そう言うと糸川は立ち上がり、先ほど呼びに来た船員に誘導されながら残り二人も続いた。

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