第6話



 殆ど音もなく電力航行3隻の潜水艦が深海から海上を目指している。


「海上に異常なし」


 航海長の池波が艦長に伝える。


「はははは、そりゃ異常はないだろう。戦争は終わったんだからね」


 糸川が答えると、航海長が応じる。


「申し訳ありません、どうも癖が抜けないようで」


「構わないさ、常に安全確認をする。大切なことだよ」


「そうですね、今や危険は放射能だけですけどね」


 二人の会話に江島が加わる。




「一人10分だ」


 浮上した潜水艦の通信室で糸川が告げる。

狭い内側のハッチが開けられ、外側のハッチが開けられると眩しい太陽の光が出入り口に入ってくる。

最初に念の為、放射能測定装置を持って艦外へ出た者が額に手を翳しながら


「太陽だ」


 と叫ぶ。


「おい、後がつかえているんだ。早くしてくれよ」


 後続の船員が苛だたしげに声を上げる。


 艦内では、暖かいインスタントの珈琲を飲みながら艦長と副長が雑談をしている。


「一人10分と言ってもどれくらいの時間がかかると思う?」


 糸川が言うと、


「そうですね、中型潜水艦からこちらに乗り換える船員達も考えると、うーん、結構な時間がかかりますよ」


「おいおい、しっかりしてくれよ、結構な時間って、それは答えになっていないよ」


「では艦長は把握できているのですか」


「そりゃ・・・、分からないよ。まぁ、ゆっくりしようじゃないか。我々は最後のグループに入ることにして、それまではこうやってコーヒーを飲んでいようじゃないか。どうだい、もう一杯おかわりは?」


「勿論、いただきますよ」


 その雑談中に機関長が現れる。


「艦長、太陽光発電の充電許可をお願いします」


「任せるよ」


「え?」


「任せると言ったんだよ。どうだい、君も暖かいコーヒーを飲まないかい?」


「有り難うございます。任務が終わればお邪魔させていただきます」

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