第4話



 大型巡航型潜水艦を前にして、中型巡航型潜水艦2隻が航続している。

先頭の大型巡航型潜水艦くらまには娯楽施設なども有りプールバーがある。

食堂は各潜水艦にあるが、ビリヤードやダーツ、囲碁将棋、を楽しみながら酒も飲めるようになっているのは、くらま、だけである。

然しながらも、酒類や副食類は制限がかかっている。

潜水艦くらまの艦長糸川は、上陸成功の時のために鞄に葉巻を忍び込ませている。

今までは作戦命令が下れば葉巻一本を胸ポケットに入れて死地へ赴く。

それは無事帰港できた時のために港で燻らすための至福の煙。

だが、今回は胸ポケットに一本ではなく、木箱ごとカバンに詰めている。


 新しく開発され続けてきたバッテリーの容量は大きく、電力が足りなくなれば太陽光を利用できるようにはなっているが、一回の巡航ではその心配は殆どない。

ただし、一回の巡航期間は無寄港で100日程度であり、今回の航行ではどれだけの電力を消費するかは計算上であって、実際のところは潜航してみないと分からない所がある。

海図が、度重なる核爆発により役に立たなくなってきているからである。

また、放射能汚染による海上の状態から、浮上出来ず、乗組員の精神状態も気になる所である。

世界で希少になった日本人を積んだ船である。

病死や事故死は仕方がないにしても自殺者だけは出したくないものである。

糸川はそう思っている。


 食料はふんだんに積んで来ている。

水と酸素は原子力潜水艦時代と同じで、海水分解システムにより電力が不足しない限り延々と補充されていく。 

充実しているようではあるが、陸上の生き物達が閉鎖空間で生活している艦内では、浮上を望む者がだんだんと増えて行っていることも事実である。

出航まえに計画していた乗組員の交換は、娯楽施設のある大型潜水艦くらまへ、早く交代して欲しい者達の苛立ちも抑えがたくなってきだしている。

耐え難いストレスは、酒を飲めるものにとってはある程度の緩和剤になるであろうし、娯楽施設での遊びも同じ事である。

いずれにしても海上の放射能濃度が予想を越えて高い濃度であることが原因で浮上できない。

浮上できなければ、乗組員の入れ替えをして大型潜水艦での娯楽施設を利用させることも出来ない。

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