第3話
石油の枯渇、そして資源を求める国々、いつ戦争が起こっても不思議ではなかった。
そして、進み過ぎた核融合の開発によって出来上がった爆発物、いつ使われても不思議はなかった。
ただ、人類の想像とは遥かに早く使用された。
つまり何よりも先に核弾頭の発射により戦争が勃発しただけのことである。
戦いの火蓋は切られたと言うよりも、最初から核兵器の応酬になり、それ以外の武器などほとんど必要なかった。
このような事態が起きることを想像以上の思いで考えたのは、糸川だけではなかった。
世界各国でそのように思う軍人が現れた。
糸川は、そのような軍人たちと秘密裏に連絡を取り付けることができた。
いずれも海に浮かぶ小さな鉄の箱、戦艦の一つくらいは動かせるような人物たちであった。
船に乗り、南極、もしくは北極あたりまで避難する計画が密かに持ち上がった。
その計画は最初の核攻撃が始まった時に進められた。
ただ、これも想像以上に起こったことは、これほどまでに激しく核弾頭のやり取りが行われたことであった。
しかも、至る所にある原子力発電所がことごとく破壊され、放射線濃度は生き物が存在できる状態をはるかに越えていた。
船、各国の戦艦で出港した者達は、大量の放射能を浴びて、既にこの世には存在しない。
糸川は、そうなることを事前に想定して、と言うよりも潜水艦の艦長を務める立場上、海底を進むことのできる人物であった。
事前の打ち合わせ通り、日本に残るものを残し、侵略国の核弾頭を積んだ船を沈める為という戦略理由をつけて、日本を離れた。
国を離れない者は多数いた。
説得はしない。
家族全員を残して自分だけが助かるなんてできない、そんな理由に対して説得できるはずがない。
乗組員は日本に向けられた核弾頭により父や母、親戚や友人、中には結婚したばかりの者や、子供が生まれたばかりの者もいたが、全てをその命を失った者達である。
当然、基地近くで恋人ができた者もいる。
「必ず、迎えに来るから」
と言い残した者もいる。
然し、その島国は幾度もの原子力爆発によって既に存在しない。
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