コンパクト・クリーナー ※サイコホラー展開気味注意

※関西弁を駆使するコンビ芸人の設定です。


家電量販店にて。客が家庭用掃除機コーナーをいろいろ見回って思案しているところへ、店員が近づいて声をかける。


店員「いらっしゃいませ!どういったものをお探しですか?」


客「ああ、にいちゃん!掃除機のな、ちっこいやつ探してんねんけどな」


店員「小型のクリーナーですね。かしこまりました。こちらなどいかがでしょう?」


と言って、卓上のコンパクトなものを出してみせる。


客「あー・・・、ちよっと小さすぎるなー。どっちかっていうと、部屋の掃除がしたいねんけど、そんな大きいやつも要らんねん。重たいやん?あと、コードも、なんやあちこち引っかかるし、いちいちあの黄色いんか赤いんかのテープ?のところまで引っ張り出さなあかんし・・・」


店員「ああ!でしたら、こちらのコンパクトマルチクリーナーなどいかがでしょう?コードレスで軽くて持ち運びも便利ですよ!オプションも色々取り揃えておりますので、さまざまな場所にお使いいただけますよ!さらに今ならこれだけの種類のパーツもセットで、収納用のケースも・・・」


と言いながらたくさんの部品を出してくる。


客「いやいやいや。そんなに色々付けんでもええねんてっ!シンプルに、コンパクトな奴でええねんて!第一、場所とるやん?もっと、こう、隙間にぴったり収まるくらいのサイズ感で・・・」


店員「でしたら、こちらなんかお勧めですよ!わずか十センチの隙間があれば、本体から各種アタッチメント・パーツ部品すべてを、どんどん上に積み重ねて収納できます!」


客「(説明が終わらないうちにやや食い気味に)いや、高ーい!!何メートル積む気やねん!!」


店員「そうですねぇ・・・5メートルもあれば、余裕かと」


客「俺の部屋そんな天井高うないわっ!それに、上の方のやつめっちゃ取りにくいやん!めんどくさいわ!」


店員「そうですかー。当社イチ押しのコンパクトクリーナー、なんですが」


客「ぜんぜんコンパクトちゃうし!ただ縦に積んだだけやしっ。コンパクトの概念おかしいやろっ。もっとちゃんとしたやつないの??」


店員「そうですねぇ・・・シンプルな奴だと、こちらのものになりますねぇ。こちら、本体と延長ノズルに充電器のみの、極めてシンプルな仕様になっております」


と言って差し出す。客人、受け取ってあれこれ見まわしたり、アタッチメントをガチャガチャいじったりしたのち、再び険しい顔つきになる。


客「まぁ・・・これが一番シンプルで使いやすそうかな・・・でも・・・うーん・・・」


店員「お客様、何かお気に召さない点がございますか?」


客「せやなー・・・この、パーツのガチャガチャ付けるのん、めんどくさいかなー・・・。ホラ、このカチッとさせるツメの部分、弱そうやし、何回か着けたり外したりしてたら、すぐ壊れそうやし・・・」


店員「なるほど・・・うーん・・・そうですねぇ・・・確かに・・・」


思案顔で商品をじっと見入る。

それからしばしの沈黙の後。


店員「・・・分かりました。とっておきのものをお出しいたしましょう。ただし、希少な品で、店頭に並べておりませんので、奥の倉庫のほうまで来て頂けますか?」


客「えっ・・・いや、そこまでしてもらわんでも普通ので・・・!いや、ちょっと待って!手ぇ放してくれって!強い強い!痛いってー・・・!!」


客人、店員に奥の部屋へと強引に引きずられていく。


何か物々しい物音「キュイーン!ガガガガガッ!キィーーーーン!ギュゴゴゴゴ・・・ガシィィィン!!・・・」


数刻後。まず店員が出てきて、扉の奥にいる客に呼び掛ける。


店員「いやぁ・・・思ったより時間がかかってしまいました・・・。お客様、調子はいかがでしょうか?」


客「・・・調子って・・・なんなん、コレ・・・(すっかり変わり果てた片腕を見て)・・・俺の・・・腕・・・どうなったん・・・(理解が追い付かずに茫然自失)」


店員「当店秘蔵の、究極一体型・コンパクトクリーナーです☆」


客「いや、一体型って・・・俺の体と一体させんでもええやん・・・(困惑)」


店員「これなら場所も取りませんし、気づいたときに素早くお掃除出来て、とても便利ですね☆あ、これは脳波で操作するタイプですので、最初に起動のスイッチだけ入れて頂ければ、あとはご自分の意のままにモードを切り替えられますよ!詳しくは、こちらの説明書に・・・」


顔色を失って嘆いている客の悲痛な嘆きをスルーして、無機質な笑顔と異様な明るい口調で淡々と商品説明を進めていく店員。ここでようやく、うっすらとした狂気を感じはじめる客。


客「・・・なぁ、俺の、腕・・・いったい・・・」


店員「ああ!失礼いたしました!新しい腕、ですね!ご安心ください!ちゃんと用意してありますから・・・」


と言って、いったん奥へ引っ込む。戻ってきた店員が持ってきたものは・・・。


客「なにこのメカメカしいヤツー!!」


店員「掃除機のままですと、さすがに日常生活に支障をきたしますので、普段はこちらをはめ込んでいただいてですね・・・」


客「いややー!!こんなん目立つー!!俺の腕返してくれーー!!(悲壮)」


店員「お気に召しませんか?最新型のシャレオツなデザインで仕上げましたのですが・・・。まぁ、アフターサービスとして、保証期間内は何度でも気に入るまでカスタマイズさせていただきますので・・・」


客「いや、そういう問題ちゃうねん・・・マジで・・・戻してくれ・・・」


店員「(泣き言スルー)あ、それと充電方法なんですが・・・邪魔にならないように、こちらにコンセントコードを収納させていただきましたので、これをご家庭のコンセントに差し込んでいただければ、三時間ほどで完了しますので」


と言いながら、客の着ているTシャツをまくり上げてコードを取り出して見せる。


客「なんかお腹んとこもいつの間にか改造されてるー!!なんもええことないやんっ?!なにしてくれてんねんーっ?!」


店員「いや、いいことありますよお客様。これはちょと内密にしておいていただきたいのですが・・・実は、念じると気を溜めてとてもサイコなガンが撃てます!!」


客「いやそれ!まんまあのアニメのやつやんっ!!命狙われるやつやんっ!!もういややー!!帰る―!!誰か助けてくれーっ!!おまわりさーん!!」


店員「あ、お客様っ!!勝手に外へ出られると困りますっ!こちら国家機密の最新防衛プロジェクトですのでッ!!速やかにお戻りくださーい!あと、お支払いがまだですーっ!!お客さまー!!!!」


※想像以上にサイコホラーっぽくになりましたすんません(阿鼻叫喚)

※Cブラなオチを付け加えてマイルドな仕上がりに修正いたしました☆





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