希望を求めて切り裂いてⅤ

「そこから、私はたけるの故郷である人工島へ移住し、今に至るという事さ」


 赤ん坊の真が入っていた箱の元まで辿り着いた一行。そこでショーンは、話を締めくくった。

 歩いた時間は十分ほどだったが、語られた過去を聞いているともっと経っているように感じる。


「えっと、つまり真って……」

 篝が驚いた目で見てくる。そしてそれに答えたのはフォシスだった。


「うむ。妾と同じメタモリアンじゃの。混血じゃが」

「俺が、メタモリアン……宇宙人とのハーフ……?」


 確かめるように呟く。それを受け入れがたい様子だと思われたのか、遥が慌てて真の正面に飛び出た。

「ハーフですか! わたくしも、日本とアメリカのハーフですので、お揃いですわね!」

「人間と宇宙人じゃ。違いありすぎじゃろへぶしっ」

 遥の気遣いを無駄にしようとしたフォシスを篝がタックルし、真を心配そうに覗き込んだ。


「真? えっと、大丈夫?」

 肩に手を置かれ、真は俯いていた顔を上げた。


「……そういえば前に、宇宙人なんて居る訳ないって言ったよな。ははっ、まさか俺自身が宇宙人だったなんてな。驚きだよ」

 そして、首から提げているペンダントを握った。


「そんで、このペンダントが、母さんなんだよな」

「そ、そうじゃ。限られたメタモリアンの中に、己以外を変化させられる力を持つ者が居る」

 よろよろと真の元へ来たフォシスはペンダント、そして洞窟全体を見渡して言った。


「草木をこの洞窟に変化させ、真が入っていたという箱を造り、己はペンダントへ姿を変えた。……命を代償にしてじゃ。そしてマコト、おぬしがフォーゼスに変身出来るのも血筋とペンダントがあってこそじゃった」

 フォシスがペンダントに触れ、労るように目を閉じた。


「まだ妾が逃げる前、聞いた事がある。王に造られしメタモリアンが、突然現れた別種族の者と一緒に消えた事を」

「別種族……それって」

 篝の問いに頷くフォシス。

「マコトの父君じゃろ。妾が生まれる前、フォーゼスの遺伝子を使って人工的にメタモリアンを造り出すという実験があった事を、ミメシスから聞いていたんじゃ」

 そこで、壁に寄りかかっていたショーンが前のめりになって聞いてきた。


「フォシス君。猛は、どうなったんだい?」

 ショーンからしてみれば、宇宙に消えた友人が生きている可能性がある。それを気にしているのは、真も同じだった。

 だが、フォシスは目を伏せ、首を振った。


「……マコトの両親は追われ、一度追い詰められたみたいなんじゃが、父君が追手の足止めをした、と。そして逃げた一人のメタモリアン、マコトの母君は、父君が乗ってきたロケットで何処かへ飛び立ったと聞いておる」

「……そうかい。真」

 ショーンはため息をつき、真へ歩み寄った。


「これが、全てだ。もう隠している事はないよ」

「ショーンさん……」

「真。キミは、私がトレジャーハンターとして掴んだ、最後の宝。友人の残した大事な宝だ。そして、息子だと思っている。今まで隠し事をしてきたせいで信じて貰えないかもしれないが、それだけは――」

「何言ってんの、ショーンさん」

 ショーンの言葉を遮り、真は横を向いた。ショーンの蒼い瞳と合った。


「今日、両親の事を知ったけど。それとは別に、ショーンさんの事は変わらず父さんだと思ってるよ」

「…………はぁ。年は取るもんじゃないね。先に戻っているよ」

 ショーンは目頭を揉みながら、去って行った。


「あはは。真ってば、初めてショーンさんを泣かせちゃったね」

「なるほど。親子の絆は、血のつながりだけではない。素晴らしいですわね」

「からかうなって。それじゃ、俺たちも戻ろう。……フォシス、どうした?」


 揃って戻ろうとするが、考え込んで立ち止まったまま動かないフォシスに気づき、振り返った。


「のじゃ? お、おぉ。さっさと戻るのじゃ。妾もうヘトヘトじゃし」


「またおぶってあげよっか?」

「おぬしの背中は筋肉ゴリゴリで硬くていかんのじゃ」

「もう絶対おぶってあげないから!」

「まぁまぁ。ホントの事ですし、怒っても仕方ない事ですわ」


 真は先程の違和感を気のせいと思い、いつものように姦しくなる三人を宥めながら戻って行った。

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