第29話 交信
「長かったです…」
「仕方ないです…」
紗弥の記憶と組織からの記録を知り改めて彼女を知れて私は少しだけ嬉しかったが、それ以上に残酷な歴史があったことに悲しくもなった。
「てことは、紗弥が地獄の鬼になったのって時系列では最後の方なんですか?」
ここまでの話では『地獄』と言うワードは最後にチラッと出た程度だ。
整理すると、ある村の巫女さんが村の意思で天然の?鬼になって休眠してそれを内閣の調査団が見つけてってかんじ。
「ええ。彼女が地獄を由来にするのは…まぁ我々の都合であり実験だったのです」
「物騒な」
元より運用目的が国の為であるのなら仕方ない気もするけど…。
「回収された時点で鬼の魂はかなり衰弱していたらしいんです。休眠の期間が長過ぎたからでしょうね」
休みすぎると体が弱るのは人だけではないのだろう。ただこの場合は魂か。
「じゃあその鬼のままでは使えずで中身を交換した的な」
「その通りです。発見された資料をもと検証した末地獄と交信できたのが割りと最近なんですよ」
当てずっぽうが当たった。っていうか地獄って交信できるんだ…。
「つまり今の紗弥の故郷がその地獄なんですね」
いや、厳密には紗弥の体にいる何か。私が普段会話している魂。地獄の鬼。名前も知らない誰か。
「ただここからかネックでしてね。地獄にも階層がありそれに属した鬼がいるわけなんですが」
確か七つか八つほど。それも経典によってまちまちだけらしいけど。
「彼女の村が何故この地獄についての資料を持っていたのか。正直な話これが一番の謎なんですよねえ…」
久保さんは首傾げながらそう言う。
「結局紗弥の出身てどこだったんですか?そこそこ下のヤバいとことか」
私自身、怪異と戦うときに地獄の炎を使うが何度か紗弥にどこ由来か説明された覚えがある。各階層の炎を使えるって結構ヤバいんじゃ。
「出身ですか。これが不思議なとこなんですよ」
勿体ぶる言い方にちょっとイライラする。おじさんは話が長いのがいけない。
「無間地獄より下です。地獄の本当の底の底。名称不明の終着点から彼女は来たんです」
神殺しの火 ゲネ @onimico
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。神殺しの火の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます