第28話 記録『地■の■■』
村の発見日から五日後、再び社に訪れたとき。休眠状態で鬼の少女は見つかった。俺を逃がし、抵抗せんとした八雲教授は血溜まりとなって再会した。
託された資料を研究室に持ち帰り保存したのち、すぐに内閣直属の傭兵を召集した俺は一抹の希望を持って村に戻ってきた。当然あんなモノに勝てるはずがないなんてことは解っていた。が、逃げのびた故の罪悪感がそうさせたのだろうか。
「丹羽殿。鬼の収容は完了しております。そろそろ撤収致しましょう」
血溜まりを見つめる俺に、褐色のハゲ頭を煌めかせながら金剛隊長が呼び掛ける。
「もう一時間泣きっぱではありませんか。調査も一段落して隊員も帰りたがっています」
気づいた頃には夕日が背に差し掛かり社も暗くなっていた。
「…わかってる…帰る」
結局この日、教授の死の確認と鬼の回収を達成できた。目標そのものは果たせたが、…それでも後悔は残る。あの日自分も無理やりにでも同行していれば、鬼を起こす前に撤退できたかもしれない。二人無事に帰還できたかもしれない。そう悔いる。
帰りのトラックでは俺だけが完全にお通夜であり、隊員も察してか珍しく皆静かだった。
鬼の方は万が一起きても対処できるように拘束具を装着させ金剛隊長が背負う形になっている。現状もし対抗できるとしたらこの人しかいないからだ。
「こんなちっこい小娘に日ノ本の命運がかかっているというのも俄に信じられんが、実際力を振るうとこまで見たんだろう。丹羽さんよ」
若い女性隊員が鬼を指指しながら小声で聞いてくる。
「見たと言ってほんの少しさ。その辺も研究室に戻って検証しないといけないから本番はまだだよ」
「ふーん。じゃ今回の私らの仕事は護衛留まりか。つまらないけど、それが一番か」
その後研究室に戻った俺が発見したことは大まかに下記のものが挙げられる。
・肉体は既に死んでいる(心肺も脳波も無い)
・魂そのものはあるが何度か移動を繰り返している
・村の文献曰く、肉体は巫女ような職であった
・村が滅んだのは村人の意思であった
また、欠けた文献には地獄についての言及されておりこれはあらゆる歴史資料にも当てはまらないこと書き連ねてあった。
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