第18話 気になる
事件の夜を最後に、私は妹に会えていない。警察曰く、今は施設へ身を預けている妹には、姉である私に近づかないよう警告を出してくれてるらしい。
「なるほどね」
と、亜摩音さんは落ち着いた様子でそうかそうかと頷く。
「この仕事に迷い混んでくる人間は大抵そんな事情抱えてるもんだから納得したよ。その…あんま驚けなくてごめんね?」
バツの悪そうな表情からも察するに、優しい人なのだろう。この人は。
「とんでもないです。話変わりますけど」
暗い話はおわり。
「紗弥の力めちゃくちゃ凄かったんですよ!なんというか想像してたスーパーマンみたいになった気分でした!」
屋上からの着地、骨折の瞬間治癒、巨体をふっ飛ばす腕力。流石に空は飛べないと思うけど、どれを取っても人間では絶対に不可能なことと断言できる。
「そうねぇ。彼女は鬼だから、その『鬼』特有の怪力はバッチリ発現出来てるようね。ほら今も」
ん?なんだろうか?亜摩音さんは私を指差す。が、その指は若干上向き。髪になんかついてるのかも。
「おでこ触ってごらん」
おでこ。手で前髪を払おうとして何か当たった。
「うわお!!」
角だ。ちょっと感覚がある!
「紗弥ちゃん程ではないけど御立派だよ」
「なんで!!え!」
紗弥には十センチ以上にもなる黒い角がある。今スマホのカメラで確認する限り、私には小指程の白い角が生えている。
「取り憑き、つまりは同調。人類は弱い生物だからより強い使い魔の方に寄っちゃうんだよ。私も最初は慣れなかったけど、一週間もすれば気にならなくなるから大丈夫」
取り憑きで発現した特徴は一日で抜ける、と続ける亜摩音さん。
「亜摩音さんにも使い魔いるんですか?見たいです!」
助けて貰ったときにはそれっぽい特徴は無かったが。
「私の?見せたいとこだけど、ここで出したらえらいこっちゃだからそのうちね」
もう気になって仕方がない。絶対強い。
「このあと仕事ありますか!?手伝いますよ!」
なんとかして見てみたい。
「そんな見たい?可愛くないしげんなりするかもだけど」
亜摩音さんは話しながらスマホに目を落とす。
「このあと一件あるから来る?」
「行きます!」
頭の中で紗弥の寝息が聞こえた。
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