第17話 妹

 私には二つ下の妹がいた。名前は稗田焰ほむら。姉である私にべったりくっつく可愛い妹であり、自慢の妹だった。運動も出来て凄く頭も良くて。運動が苦手で勉強も苦手な私と正反対。

 何かする度に私に嬉そうに報告してきては感想を聞きたがる。そんな愛らしい姿を、私は妬むことが出来なかった。

 十四歳の頃。高校受験に悩む私はストレスから親の方針に反抗していた。『お前にここは無理だ』『ここに妥協しなさい』と。受験生には呪詛にも等しい言葉だが、当時の私はその言葉を認められなかったのだ。険悪な期間がしばらく続くと、ある日ついに本格的な言い合いに発展した。それでも焰は私の味方だった。

 その晩は泣き疲れ、ベッドで眠る前に『なぜこんな親の下にうまれたのか』『死んでしまえばいい』などと思ってしまった。意識が途切れる直前、部屋の扉が開く。開けたのは焰だ。どうしたの、と声をかける前に、私は気付いた。真っ赤に、血の匂いを振り撒く焰の姿に。

「もう大丈夫。姉さんは私が守るよ」

 これが最後に聞いた焰の言葉だった。



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