第13話 実戦

 移動も超能力じみた現象でやるのかと期待マンマンでした。急っぽくないし電車で行こうか。三神さんの言葉になんか…現実に戻されてしまった。電車での移動中は紗弥は私に潜っているらしく、姿は見えない。これは取り憑きとは少し違うそうだ。

「新宿はヤバい。人口の多さ、それから人の怨みが積もりやすい場所でね。担当者は皆強いし数も多いから」

「あの最初出会ったときに新宿担当ってどやってたのはそういうことだったんですか?」

 忘れもしない。助けてくれたと同時に私を同業と思い込んでカッコつけてた三神さんの姿は今でも鮮明に思い出せる。

「…まぁ一応エリートだから私。実力見せるより担当地区教えた方が相手も理解してくれるからね」

 そんな魔境に新人を連れて行くな…そうツッコミたいが流石に憚りがある。

「実戦で説明する暇ないから今説明するね。目標発生地点は予め私が異界化させて無人にしておくから。んで灯火ちゃんがそこに入って目標を鎮圧、つまりは殺すつもりでボコボコにしちゃって。」

 つまり怪異と決闘になると。いやあああ。

「無人。でも何かあったときに三神さん、助けてくれますか?」

「どうかねぇ。見守ってるから死にそうなら助けるし、灯火ちゃんに闘う才能が見出せなかったら見捨てちゃうかもよ~?」

 怖いこと言わないでくださいよ…。

 気付けば新宿駅についていた。さぁ、気持ち切り替えて。もしかしたら死ぬかもなんだ。事故とは言え足を踏み入れた以上は。まだ聞いてないけど給料出るかもだし。

 地上に出てすぐ目標地点とされる繁華街へ向かう。徐々に人が少なくなってる気がする。ついに無人の空間にやってきた。ここが私の戦場か。

「紗弥…いる?」

「いるよ」

「うわ!」

 真後ろにいきなり立たれるとびっくりする。とりあえずは目標を探さないといけない。私自身が早く帰りたくて、そして恐怖心で焦ってる。

「いた…!」

 曲がり角を越えた先にソレはいた。毛むくじゃらでヒグマよりデカイなにかが。黒い羽はその図体に見合ない小ささだ。見てすぐ思い浮かんだのは悪魔だった。確か悪魔ってこう、物理で殴ってくるよりか人間を唆してとかそんなイメージだけど。

 考えてるうちに悪魔はこっちを振り向いた。顔は無く、だが頭部と思われる部分に巨大な角が見える。高さは10メートルくらいか。え?と、私が面食らった刹那。悪魔は走りだした。

「来た来た来た!!!」

 今度はちゃんと走れる。昨日はこけたけど。戦うつもりで来ておいて逃げるのはおかしいかもしれない。でもあんなのがこっち向けて走ってきたらだれでも逃げだすことは間違いない。だがしかし悪魔のスピードには勝てないだろう。三秒でトップスピードに入った悪魔はダンプカーのような迫力で突進してくる。どっすどっす。音が近づく。

「紗弥!!」

 逃げて気付いた。私には紗弥がいる。取り憑きとやらを使えば状況は変えられる。このまま轢かれる以外の未来が一つ増えるはずだ。

 しかし、紗弥の返事はなかった。


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