第12話 繋ぐ手
日曜の小学校って平日と違いこんなにも寂しい雰囲気が漂う場なのか。明るいうちに全容を眺めると、改めて母校に戻ってきた不思議な感覚を覚える。
「警備の人とかいないのここ?ていうか先生方が一人も見当たらないだけど」
「僕の影響だよ。今の灯火は幽霊と同じ状態にしてるから。あそこについたら解除するよ」
「そんな昨日もあるの…色々ありがとね」
紗弥は笑顔を返しくれた。可愛い顔してその実は怪異なんだから、分からんもんよね。
警戒は杞憂だった。そうこうしてるうちに昨日の下駄箱にたどりつく。これをたしか右に引っ張って。
「ふんぬぬぅ!!ぐ!ぐ!…だはぁダメ!重!」
木製の巨大な下駄箱は見た目以上の重量があるようだ。昨日三神さんが片手で開く様を見て頑張ればいけるのではなんて思ったのが馬鹿だった。
「僕がやるよ」
降参した私は位置譲る。敗者は道を譲るものだ。紗弥は足を少し踏ん張ると右手だけでズルズルと下駄箱をどかして見せた。
「おおお流石!」
踏ん張りで体の固定が必要な当たり、本人の体重がかなり軽いのだろう。
「これは鬼の筋力の一端だよ。まだ明るいから本調子じゃないかな」
「やっぱ夜の方が動きやすいの?昨日ワイヤーちぎってたしさ」
「怪異だからね。太陽に向いてないときが僕らの昼みたいなものだから」
なるほど怪談が夜のシチュエーションが多いのはそういう訳があったからなのか。
「行こ。手繋いで」
「え!あ、うん。なんか妹みたいだね」
「灯火は何歳?」
「十七!」
「僕は今年で二百三歳」
またまたご冗談を。こんな可愛い女の子でもそんなこと言うとは恐れいった。
「まあ嘘だけど本当は八十九!休眠から起こされたから…実質十歳くらいだっけ」
「情報多すぎない…?」
ちなみにあとから久保さんから聞いたらこれは事実であったそうだ。
下駄箱の怪談を降り防火扉に入る。オフィスにつくとすぐに三神さんがいた。お互い同じタイミングで気付いたようだ。
「おはようございます…」
「おはよ!良い絵面だねぇ!似たような時期あったなぁ私も」
鬼の少女と手を繋いで入って来た私の様はさぞおかしな光景に見えたことだろう。
「今日何するんですか?」
目的をまだ聞いてなかったしこの人についてもまだまだ知らないことばかりだ。
「今日は早速灯火ちゃんにその子の力を使ってもらいます!使い魔の力を把握するのは大前提だからね!」
「力って紗弥のを私がですか?」
「そうそう。具体的には貴女が先ず完全に憑かれること、そして怪異の力を貴女という人間の意思で操るの」
漫画の世界が唐突に自分を侵食している感覚に陥る。実はテレビのどっきりとか。無いかぁ。現実かぁ。
「…わかりました。頑張ってみます」
「ほいじゃ今連絡来たから新宿で実戦行こうか」
準備体操くらいしていいでしょうか。
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