第9話 信じた
紗弥と名乗る少女が伸ばした手を、私は握った。親愛を信じて伸ばされた手を、私は無視するようなことはしたくなかったのだ。例えそれが人でなかったとしても。
「婚姻かは分からないけどよろしく。紗弥」
透き通るように青白い肌の少女は嬉しそうに、無邪気に子供らしい笑顔を見せた。
「稗田さんやりましたねぇ!!」
「灯火ちゃんマジでやったの!?」
室内のスピーカーからハウリング混じりに声が鳴る。久保さんと三神さんだ。私を見守ってくれていた。久保さんらしき声は少し咳払いして冷静に指示を出した。
「あー零号君は一度拘束台まで下がるようお願いいたします。それから稗田さんは階段を上がって戻ってきて下さい。既に解錠してあります」
一度戻らないとだ。まだ話してみたいことはあるが少し疲れたのも事実だ。
「すぐ戻ります!」
私は紗弥に軽く手を振って階段を駆けてゆく。
「灯火ちゃんお手柄だねぇ…鬼ときたか。これからは忙しい毎日になるかもね」
どうやらさっきの握手が『仮契約』となったらしい。三神さんは嬉しそうだ。なんでも珍しい契約の後輩を同僚に自慢したいらしい。
「あのそろそろ本格的に眠くなってきまして」
多分これ以上は情報の量に耐えられずパンクしちゃう予感がする。今は寝たい。
「今後については明日説明しましょう!零号…いや、紗弥君にもこちらから説明はしておきます。稗田さん今日は上がっちゃって下さい!」
「お言葉に甘えさせていただきます…お先に失礼しますね」
二人はまだ残業だろうか。久保さん書類を抱え、三神さんはずっとスマホで人に連絡していた。
とにかく今日はこれで帰れる…幸い私のアパートまでここから10分もかからない。眠いや。
帰路には問題無し。また首がひっくり返ったオバケが来たらどうしたものかと思ったが静かそのものだった。シャワーは朝でいいや。歯磨くだけでいいか。
歯も磨いてベッドに倒れ込むとすぐに意識は薄らぎ、眠りに落ちる。なんか忘れてる気がするけど忘れる程度のことならいいよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます