第7話 怪異

 身長が177センチ。体重は59キロ。血液型はO型。基礎疾患無し。至って健康でちょっとデカイ女子高生とは私のことだ。

「体重増えてるぅ!」

 返ってきた測定結果に動揺する私を尻目になにやら久保さんは誰かと電話している。盗み聞きはよくないのは知ってるけど聞こえちゃうもの仕方ないよね?

「…一号は…。…負荷検証もまだ…はい…。…てみます…」

 あんま聞き取れなかった。仕事関係だと思うがやっぱり大人は忙しいのだろうか。

「お待たせしましたね稗田さん!さっき言った取り憑きの話ですが説明しましょう」

 まるで想像できてなかったけど憑かれるってどんなかんじなの?

「オバケといっても人工の怪異でしてね。天然モノ、いわば自然発生したような貴女が遭遇したモノとは性質が異なるので安心して下さい!」

 安心できないなぁ。

「手順としてはこうです!こちら側で用意した怪異と対話してもらって怪異に勝てばいいだけです」

 対話っていうか怪異ってコミュニケーションできるのか。それを人工で用意するのすごいな現代。

「あ~もしその対話をしてこっちが負けたらどうなります?」

「食われることになりますね。完全に体は乗っ取られるわけなんで馴染む前に即処分させていただきます」

 だめじゃん。さっき生死問われたのにまた問われてんじゃん。

「あとそれについてですけどね?」

 まだ怖い話が継続してるよ!?

「うちにいる怪異がちょっとまだ未解明なやつてまして。ただ今日中にはやらないといけないのでここで選択です」

 どういうこと?作っておいて未解明なんてことあるの?

「うちで受けて頂くか今から中野区の部署まで移動して受けて頂くかの二択ですね」

 遠いしバイト上がりなんですがこちとら。疲れも合間って早く帰りたい気持ちが膨れてゆく。ここからまた中野まで移動したとしたら帰る頃には日付も替わってしまうことだろう。

「ここでやります!」

 帰りたい一心で考えずに喋ってみたが本当によかったのかこれで。

「そうですか…じゃ更に地下に移動しますのでついて来て下さいね」

 このとき、久保さんは一瞬悲しそうな目をした。それは仕事が増える事に対しての悲哀か、私に対しての憐れみか。

「ちなみにどんな怪異なんです?」

 少し気になっていた言葉を口にした。これから闘うことになる何かにをまだ知らないのだ。

「うーん…有り体に言えば『鬼』です」

 現実味の無い言葉が地下へ続く階段に響く。

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