第4話 叶った目的?

 後悔するとすれば、それは「灯火今日は疲れてるっぽいし早く上がる?」なんて渚の言葉に甘えてしまった事だろうか。普通にいつも通り一緒に帰ってればこんな事態には遭遇しなかったんだろうなあ。

「で担当は?」

「あ…接客…?」

 問いの意味がよく分からない。初めての参考書くらいに分からない。くようきょくってなに?

「んん?もしかして」

「はい?」

「いっぱんじん?」

「…私一般人ですか?」

 三神と名乗った美人は長い黒髪をガシガシと掻くなり明らかに困った表情をしている。

「えぇ…なんでだ…封じ目が効いてなかった的なあれか…」

 はてさてまた未知の単語が。私はどうなってしまうのでしょうか。

「…大きなお嬢さんや名前は?」

 真っ赤な流し目が向けられる。怖いね。

「稗田灯火といいます」

 しばらく頭を抱えていたようだが何か決心したように三神と名乗った女性はこちらに向き直りぶっ飛んだことを仰った。

「今から事故死に見せかけて殺されるか、うちで働くか。どっちがいい?」

「はっははは働くです!!」

 脅迫じゃない?

「素直でよいよい」

 満足していただけたようだ。

「あのぉ色々聞きたいのですが…」

「道すがら説明するから。しばらく歩こ!」

 殺気立った空気からスッとお姉さんな空気に変わった。なんだこの人。

 疑問は重なるばかりだっからか、ここから解答を聞けるのかと思うとほんの少しワクワクした。

「この仕事はね。ざっくり言うと、妖怪とか幽霊とかを退治する仕事なんだよね。たま~に神様すら相手にするときもあるからね」

「妖怪に幽霊ですか?」

 まだ半信半疑というか、いや私の頭がやっぱり現実に追い付いてないんだな。

「そ!妖怪だとかの類は暴力で解決できるからまだ速いんだけど、神様だとちょこっと手順があって時間掛かるんだよね」

 暴力とな…いやでも怪物だしそういうの効くのかな?

「さっきの二択なんだったんですか?」

 なんなら一番の疑問ですらある。働くのか私。事故死するのか私。

「そうさねぇ例えば企業秘密をさ?バラされそうなら止めるじゃん?お金による口止めも昔はやってたんだけど今じゃSNSでの発信があるから上が口止めの信用性を疑っちゃってさ。殺した方が手っ取り早いって結論になったわけ!」

 物騒だけどそういう組織的な理由もあるのか。確かに、現代人はもうほぼ全員が『発信する側の人間』になってるし、見てしまった好奇心はお金では抑えつけがきかないのかもしれない。

「そこで現場から意見。現場の人手不足が問題になってるからいっそのこと利用してはどうかって声が上がったの」

 そんなことで働くかの選択肢が生まれのもよっぽど人手が足りてないのでは。

「えっとこれからどこ行くんですか?」

 無意識な声が出た。散歩だけしてバイバイには流石にならないだろう。

「とりあえずこの地区を管轄してる駆妖局に行って手続き地獄だね」

 いやな言葉。手続き。

 まずはそこまで付いて行こう。







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