第2話 過ち

 今日も今日とてバイトだ全く。出費が激しいお年頃故にだ全く。そもそも自腹で大学を目指す女子高生がこの世にどれだけいるんだ全く全く。

「もうがっこも退学したい…」

 本心である。

「いんじゃね?」

 ぼんやり振った言葉に対して雑に返す友人。

「辞めればいいじゃん」

 名を高瀬渚。『丁度良いかんじ』を座右の銘にして生きてきた左腕が義手の同い年の女だ。

「時期的に?それとも適当な返事かね?」

 十中八九適当と推定した。

「経済的に厳しいんでしょ?なら大学ってタスク無くしてシフト増やすか就職しかないじゃんね」

 思いの他ちゃんとした意見だった。刺さるねぇ。

「この話やっぱやめ!現実見せないで!」

「でもどうすんのさ。放置した感情のツケは貯まってくよ?」

 追及は止まらない。

「丁度良い案はなかろうか…」

「就職!」

 気持ちいい即答に落ち込むふりをして真面目に落ち込む。どうあれこのままだと本当に就職しないといけなくなるんだろうなぁ…。

「灯火やりたいことないの?服とか好きでしょ?そういう系のやつ探せばあると思うよ」

 確かに服は好きだけどそれで労働したいかと言えばちょっとね。

「石油王かなぁ!」

「倉庫にスコップあるからいつでもいけるよ!」

 雑談なのか相談なのか分からない時間を過ごすうちに休憩も終わりまた勤労タイムがやってきた。

 早く帰りたい。

 この帰りたいなんて考えもまた過ちだったのかもしれない

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