第10話 モフモフとプニプニ

 翌日も、またライモンドに会いに奥の庭へと行った。


「ライモンド! 昨日の疲れは取れた?」


「マリアンナ、来てくれてありがとう! もうすっかり元気だよ」


 そう言って、ライモンドがピョンと飛び跳ねる。よかった、今日は元気みたいだ。


 それから、今日は、細い足場を歩く練習や、高いところから飛び下りる練習をした。


 飛び下りる練習は、何度も繰り返すうちに度胸がついてきたのか、身長の高さくらいの場所からなら難なく飛べるようにまでなった。


「すごいわ、ライモンド! 飛び下りるときの姿勢がとっても綺麗」


「本当? 次はもう少し高いところから飛んでみようかな」


 ライモンドが先ほどより少し高い枝に登ろうと駆けた時……。


「痛っ」


 前足に痛みを感じたようで、急停止した。


「どうしたの!? 大丈夫?」


 私が慌てて駆け寄ると、ライモンドは前足で尖った小石を踏んでしまったようで、少し血が出ていた。


「まあ、大変!」


 私は人間の姿に戻って、ライモンドを抱きかかえた。ここは庭園なので、綺麗な水をくめる場所があるから助かった。怪我をした前足を洗い流して、ポケットから出した清潔なハンカチを押し当ててあげる。


「しばらくこうやって止血しましょうね」


 私はちょうどいい木陰を見つけて座り、ライモンドを膝の上に乗せる。

 ライモンドはなぜか黙り込んだまま動かないので、私はこれ幸いとばかりに、そっとライモンドの頭を撫でた。柔らかい毛並みが気持ちいい。


 ライモンドはやはりじっとしたままなので、私は撫で撫でしても良しのサインと受け取った。


 調子に乗って、怪我をしていない方の前足を取り、肉球をプニプニする。

 ああ、モフモフもプニプニも気持ちが良すぎて、最高に心が癒される……。


 先ほどまで固まっていたライモンドも、今やすっかり安心しきった様子で体を私に預けてきている。撫でられる方も気持ちがいいのだろう。


 猫姿のライモンドはずんぐりむっくりだけど、丸っこくて分厚い耳も、大きな鼻も、太い脚も、なんだか愛おしくて仕方ない。

 

「あなたの毛並み、とっても素敵よ。猫にしてはちょっと太めの体型だけど、それもだんだん愛らしく見えてきたわ」


「……ありがとう。君の猫姿も素敵だよ。……もちろん、人間の姿も」


「まあ、嬉しいわ。ありがとう」


 モフモフを堪能したおかげか、なんだか心が温かくて幸せな気分だ。

 やっぱり私は猫が好きだわと思いながら、膝の上のライモンドを優しく丁寧に撫で続けた。

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